ライブハウスの開業資金には、物件取得費や内外装の初期費用と、人件費や家賃などのランニングコストが必要です。物件探しには立地や天井の高さや周囲の理解がポイントです。契約の注意点なども確認しておきましょう。
インディーズバンドやメジャーバンドの演奏を楽しむ場所を提供するライブハウスを開業する場合にはどのくらいの資金が必要なのでしょうか?
今回の記事では、ライブハウスの開業資金の内訳や、資金の調達方法を紹介します。さらに物件選びに大切な3つのポイントも紹介します。
もくじ
1. ライブハウスの開業資金
ライブハウスの開業資金は、広さや立地によっても大きく異なりますが、600~1,000万円は必要です。
1-2. 初期費用と内訳
ライブハウスに必要な初期費用には、物件取得費と内外装の工事費があります。
・物件取得費
物件取得費は地域や物件の大きさによっても異なりますが、東京都内の場合は1坪あたり1~3万円かかります。ある程度の観客を収容できる物件を借りる場合には、50~100万円かかります。
新規で物件を契約する際には、家賃のほかに保証金や礼金、仲介手数料が必要です。保証金が家賃の6カ月分の場合には物件取得費に300~600万円かかります。
・内外装工事費
借りた物件をライブハウスとして利用するためには、店舗の内装工事、空調の工事、防音工事、電気や水道の工事が必要です。さらにステージや照明に関する設備も重要です。
また、飲食可能のライブハウスにする場合には調理場や客席も必要です。業者に内外装を依頼した場合は、1坪当たり22~30万円、300~400万円かかります。
・音響機材
ライブハウスを開業するには、音響機材をそろえる必要があります。主な機材としてベースアンプやギターアンプ、モニターやスピーカー、PA音響機器などがあります。
どんなジャンルのライブハウスにするかによっても大きく異なり、アコースティックライブを中心にするならば費用も抑えることができます。
音響機材は新品で揃えるか中古で揃えるかによっても異なりますが、100万円を見積もるのが良いでしょう。
1-3. ランニングコスト
ライブハウスを開業する場合のランニングコストは190~240万円です。開業から数カ月程度はお客さんを集めることは難しいため、最低でも3カ月以上のランニングコストの資金は事前に準備しておきましょう。
具体的には以下のものがあります。
・家賃
物件を賃貸で借りる場合には家賃がかかります。家賃は地域や建物の大きさによっても異なりますが、都内で小規模のライブハウスを運営する場合は50~100万円の家賃がかかります。
・人件費
ライブハウスを運営するためには従業員を確保しなければなりません。仮に5人の従業員を雇う場合は、1人20万円の給料で合計100万円がかかります。従業員を減らせば人件費を減らすことも可能ですが、お客さんや演奏者の安全を考えるならば、ある程度の人数は確保しなければならないでしょう。
・必要経費
ライブハウスでの必要経費として、光熱費、機材のメンテナンス代、広告宣伝費などがあります。飲食を提供するライブハウスなら、ドリンク代や食材費も必要です。必要経費は立地によっても大きく異なりますが、40万円はかかるでしょう。
2. ライブハウスに必要な開業資金の調達方法
ライブハウスに必要な開業資金を調達する方法として、以下の選択肢があります。
・自己資金
開業の際には自己資金を用意しておくことが大切です。国の補助金や助成金、民間の金融機関を利用して資金を調達することは可能ですが、融資の申請をする際には自己資金率を調査されます。自己資金が全くないと融資の許可が下りない可能性もあるため、開業の計画を立てたなら、1円でも多くの自己資金を貯めるようにしましょう。
・家族に支援してもらう
自己資金を貯めるのが難しい場合には、家族と相談して支援してもらう方法があります。家族に支援してもらう場合でも、事業計画などを用意して返済プランなどを説明するようにしましょう。また貸し借りのトラブルを避けるためにも、借用書を作成しておきましょう。
・民間の金融機関に融資してもらう
自己資金以外で開業資金を調達する方法として、銀行や信用金庫などの民間の金融機関があります。金融機関から融資してもらう場合の目安は自己資金の2倍です。例えば、自己資金が400万円の場合には800万円まで融資してもらうことが可能です。
・国の補助金や助成金
補助金や助成金は、事業活動の促進や雇用の促進を目的に資金を援助しているため、状況によっては支援を受けることができます。補助金や助成金の募集案件はたくさんあり、自分の計画している事業に合った案件を見つけることが必要です。詳しい情報は、ホームページや自治体のセミナーなどで集めることができます。
3. ライブハウスに最適な物件の選び方
ライブハウスを開業する場合には物件選びが大切です。物件は一度契約すると変更はできないため、慎重に選ぶようにしましょう。
3-1. 物件選びの3つのポイント
・立地
演奏するバンドや歌手にファンがついていれば交通の利便性を考える必要はそれほどありませんが、地域によってはマーケティングが異なることもあります。開業したいライブハウスのコンセプトにあったエリアを選ぶようにしましょう。
・天井の高さ
ライブハウスとして使用する場合には、なるべく天井の高い物件を選びましょう。天井が高いライブハウスはステージを高くできるため、すべてのお客さんがストレスなく鑑賞できます。逆にステージが低いと演奏者が見えにくくなるため、リピーターを作るのが難しくなります。
・周囲の理解
ライブハウスを開業する場合には近隣住民の理解が必要です。演奏における騒音問題やライブ前後におけるお客さんのマナーの問題などが関係するため、物件を借りる際にはライブハウスを開業することへの理解を求めることが大切です。
3-2. 契約時の注意点
ライブハウスに適した物件が見つかったら、大家との間で賃貸契約を結びます。物件の契約時には開業のことで頭がいっぱいになり、契約の細かい内容まで確認せずに印鑑を押してしまいがちです。一度契約にサインをしてしまうと変更するのは難しくなります。そのため、契約時にはすべての内容をよく読んでからサインをしましょう。
4. ライブハウスで黒字経営するコツ
ライブハウスのような店舗ビジネスで黒字経営を目指すためには、お客さんにとって居心地の良い空間を提供できるかどうかが鍵になります。
ライブハウスの中には、「有名なアーティストを輩出した」ことを売りにするところもありますが、お客さんは雰囲気が良いことや清潔感があることを重視します。
さらに、そこのライブハウスしかないという個性があると集客力がアップします。出演者目線でなく、お客さん目線の経営をすることが成功の秘訣です。
5. ライブハウスの開業に成功した事例と年収
ライブハウスを開業した人の中には、年収が1,000万円を超えている人もいます。成功事例として、音響だけではなく提供する食事にもこだわったところもあります。
沖縄にあるライブハウスでは、本格的な沖縄料理や泡盛などのお酒を提供することで多くのお客さんを集めています。演奏もポップスやジャズをはじめ、演劇やエイサーなどさまざまなジャンルの音楽を鑑賞できます。
6. ライブハウスの開業に必要な資格・許可
ライブハウスを開業するためには税務署への「開業届」が必要です。さらに飲食を提供するライブハウスを開業する場合には「食品衛生責任者」と「防火管理者」の資格の取得が必要です。どちらも指定の講義を受ければすぐに取得できますので、開業前にトラブルにならないためにも早めに取得しましょう。
7. まとめ
ライブハウスを開業するには600~1,000万円の費用がかかります。開業する場合には自己資金の比率を高めることは大切です。自己資金があれば、金融機関や補助金や助成金も利用しやすくなるため、開業までには1円でも多くの資金を集めるようにしましょう。
ライブハウスを開業するための物件を選ぶときには、立地や天井の高さや周囲の理解は大切です。また契約時には契約内容をしっかりと確認するようにしましょう。