ダイニングバーの開業資金は地域によって異なりますが、最低でも1,200万円は必要です。黒字経営をするためには、最適な物件を選ぶことやお店のコンセプトを明確にすることが重要です。開業資金や内訳をまとめました。
おいしい料理とお酒を提供するダイニングバーを開業するためにはどのくらいの資金が必要なのでしょうか?ダイニングバーの開業資金と内訳を紹介します。さらに、黒字経営をするためのコツや、物件を選ぶときに注意したい3つのポイントもまとめています。
もくじ
1. ダイニングバーの開業資金
ダイニングバーを開業する場合にはさまざまな準備が必要ですが、まずは開業のための資金を用意することから始めましょう。ダイニングバーの開業資金は、初期費用とランニングコストにわかれます。
1-2. 初期費用と内訳
ダイニングバーの初期費用は店を構える地域や店の規模によっても異なりますが、900〜1,500万円はかかるでしょう。おもな初期費用には以下のものがあります。
・物件取得費
物件取得費とは、開業予定の物件を賃貸契約するときにかかる費用のことです。物件取得費には、初回の家賃、仲介手数料、保証料が含まれていますが、不動産会社によっては礼金も支払います。
契約内容によっても多少は異なりますが、基本的には仲介手数料と礼金は家賃1カ月分の金額を、保証料は家賃6〜12カ月分の金額を支払います。仮に家賃20万円の物件を借りる場合には、物件取得費として180〜300万円を支払います。
・内装工事費
内装工事費は、最低限の設備が整っている「居抜き物件」か、設備が全くない「スケルトン物件」かによって大きく異なります。居抜き物件なら水道の配管工事や電気の配線工事がいらないため工事費が安くすみます。
さらに、調理場の設備をそのままの状態で使用するなら、その分の工事費用がおさえられます。ただし、不動産会社によっては譲渡料が必要なところもあるため、居抜き物件を借りる際には、譲渡料などの特別な費用が必要か確認をしましょう。
内装工事費は坪単価で計算します。地域によっても異なりますが、内装工事費は1坪あたり30〜50万円が一般的です。仮に20坪の物件なら内装工事費として600〜1,000万円がかかります。
・開業のための費用
物件のほかにダイニングバーの開業に必要なものとして以下のものがあります。
・冷蔵庫
・調理道具
・食器類
・ユニフォーム
・家具
開業予定の店舗の大きさによっても異なりますが、全部を新品でそろえる場合は150万円以上かかるでしょう。開業資金が限られている場合は、一部を中古でそろえることで費用がおさえられます。
1-3. ランニングコスト
開業資金には、店を運営するためのランニングコストも含めます。特に、オープンからの数カ月は集客を見込むことが難しいため、開業前には3〜5カ月分のランニングコストを用意しておきましょう。目安としては300〜500万円です。
ダイニングバーのランニングコストには、以下のものがあげられます。
・家賃
・人件費
・水道光熱費
・通信費
・箸やナプキンなどの消耗品
・食材やお酒などの仕入れ代
・広告宣伝費
家賃や人件費などは毎月の支払いがほぼ一定ですが、材料費や消耗品の費用は店舗の規模や売り上げによっても異なります。初めてダイニングバーを開業する場合は、最初の数カ月間は材料費や消耗品の費用がどのくらいかかるのかが分かりづらいですが、慣れてくると把握できるようになり、無駄なコストを減らすことができるでしょう。
2. ダイニングバーに必要な開業資金の調達方法
ダイニングバーの開業資金を算出したら、今度は資金の調達にかかります。開業資金の全てを自己資金のみで用意するのは難しいですが、融資を受けやすくするために最低でも開業資金の30〜50%は用意しておきましょう。
融資を受ける方法としては、銀行と日本政策金融公庫があります。事業計画がきちんとしていれば、どちらの方法を使っても融資を受けることは可能ですが、日本政策金融公庫のほうが審査のスピードが早いため、開業までの準備の期間を短くできます。融資の申請をしてから実際に資金を受け取るまで、銀行なら1〜2カ月半の期間が、日本政策金融公庫なら1〜2週間に短縮できます。
3. ダイニングバーに最適な物件の選び方
ダイニングバーのビジネスを成功させるためには、集客が見込まれる物件を選ぶことが重要です。最適な物件を選ぶ際には、以下の3つのポイントをおさえておきましょう。
3-1. 物件選びの3つのポイント
・該当する物件の地域人口を調査する
物件を選ぶ際には、候補となる物件の地域人口を調べておくことが大切です。物件から半径500m以内にどれほどの人が住んでいるのか確認しておきましょう。近くに駅があれば、1日の乗降客数もチェックしておきます。目安として、1日35,000人の乗降客なら安定した集客を期待できます。
・視認性をチェックする
ダイニングバーなどの飲食店の中には、人の流れはあるものの集客に苦労しているところもあります。集客が思うように伸びない原因として視認性があげられます。
視認性とはお店の認識のしやすさのことです。ダイニングバーだとすぐに認識できなければ、集客は難しくなります。物件を確かめるときは、以下の点を確認しましょう。
・物件や看板の見やすさ
該当する物件が、どの位置からどの距離で認識できるかを確認しましょう。遠くからでもはっきりと認識できる物件なら客付きは早いといえます。逆に路地裏などは視認性が低いため集客は難しくなります。
・間口の広さ
該当する物件の間口が、どのくらいの広さかを確認しましょう。間口が極端に狭い物件や薄暗い物件は、心理的に避けてしまう傾向があるためおすすめできません。さらに、入口までの安全性に問題のある物件についても、本能的に避けてしまう恐れがあるため注意しましょう。
・居抜き物件にも要注意
居抜き物件は最低限の設備がそろっているため、開業に必要な費用をおさえることができるメリットがありますが、物件によっては注意も必要です。
居抜き物件を借りる際には調理場の位置を確認しましょう。調理場の位置を変更するとガス管や水道管の位置を移設しなければならず、通常の工事よりも費用がかかります。そのため、既存の調理場で問題はないかをチェックしておきましょう。
調理場に害虫が生息していないかも確認しましょう。害虫が発生しやすい物件は定期的に駆除を行わなければならず費用もかかります。また、衛生管理の面でも問題が発生しやすいため注意が必要です。
他にも、以前に周辺住民とのトラブルが発生したことのある居抜き物件は、マイナスのイメージがあるため集客が思うようにいかないこともあります。居抜き物件を借りるときには、費用以外にも開業をする上で問題はないかしっかりと検討しましょう。
3-2. 契約時の注意点
ダイニングバーの開業に最適な物件を見つけた場合は、不動産会社会社と賃貸契約を交わします。契約の際には契約書による確認が行われますが、必ず契約内容をきちんと確認をしてから印鑑を押すようにしましょう。
契約書の内容を確認するときに、特に注意しておきたいのは更新や解除の事項です。飲食店の物件の多くは契約期間が定められており、更新や解約などは数カ月前に連絡しなければなりません。不動産会社によっては6カ月前としているところもあり、業績不振で閉店する場合でも数カ月間は家賃を支払わなければならないこともあります。
4. ダイニングバーで黒字経営するコツ
ダイニングバーは通常のバーとは異なり、お酒だけでなく手の込んだ料理も提供します。そのため、黒字経営をするためにはお店のコンセプトを明確にすることが大切です。
料理には、和食、洋食、イタリアン、中華、アジア料理までいろいろ選べますが、その地域のニーズに合わせた料理を提供するようにしましょう。どんなにおいしい料理でも、価格や店の雰囲気がお客さんのニーズに合っていなければリピーターを増やすことは難しくなります。地域の住民の年齢層や家族構成、競合店などをチェックして、お客さんに喜んでもらえるメニューを提供するようにしましょう。
5. ダイニングバーの開業に成功した事例と年収
ダイニングバーを開業した経営者の中には、年収が1,000万円の人もいます。都内にダイニングバーの店舗を構えるある経営者は、低リスクの経営を意識することで売り上げアップに成功しました。
ダイニングバーの物件は駅近や繁華街などが人気ですが、家賃が高く経営を圧迫するというデメリットもあります。そこで、あえて駅よりも遠い場所にダイニングバーをオープンすることで毎月のランニングコストをおさえることができました。
立地が多少悪くてもメニューにバリエーションをつけることでリピーターを獲得することができ、安定した経営を続けることができます。
6. ダイニングバーの開業に必要な資格・許可
ダイニングバーを開業するための特別な資格や学歴などはありませんが、開業をするための許可は必要です。ダイニングバーでは2つの許可が必要です。
・食品衛生法に基づく営業許可
ダイニングバーなどの飲食店を開業するためには、食品衛生法に基づく営業許可が必要です。許可の申請は保健所の食品衛生課で行います。
申請の際には、食品衛生責任者も立てなければなりません。食品衛生責任者となるには調理師や栄養士の資格が必要ですが、そうした資格がない場合には講習で責任者の資格を取得します。
・深夜酒類提供飲食店営業の届出
深夜の営業も行うダイニングバーを開業するためには、深夜酒類提供飲食店営業の届出も必要です。届出の申請は、最寄りの警察署の公安委員会で行います。
7. まとめ
ダイニングバーの開業資金は、開業する地域や店の大きさによっても異なりますが、最低でも1,200万円は必要です。開業資金は自己資金を用意するのが一番ですが、難しい場合は銀行や日本政策金融公庫で融資を受けることもできます。
ダイニングバーのビジネスを成功させるためには、明確なコンセプトを決めることです。オープンする地域のニーズに合わせたメニューを提供したり店作りを行ったりすることで、安定した売り上げを確保できるでしょう。