グループホームの開業を目指す人に向けて、必要になる初期費用やランニングコストに当たる開業資金などの詳細をお伝えします。資金調達方法や最適な物件を見つけるときに考慮したいポイントもご紹介します。ニーズに応えることで黒字経営への道が開かれます。
社会背景が後押しをして、老人ホームやグループホームを開業する人が増えています。大きな社会貢献ができる事業ですが、高まるニーズに応えるためにも経営を軌道に乗せる必要があります。
今回はグループホームを開業するために必要な初期費用やランニングコスト、そして資金調達法をお伝えします。また、経営を黒字にするためのコツや、最適な物件を探すポイントなどもご紹介します。
グループホームの開業には、個人経営の他にフランチャイズ経営の道もありますので、併せて参考にしてください。
もくじ
1. グループホームに必要な開業資金
グループホームの開業資金は、最適な物件が見つかるかどうかで大きな違いが生まれます。
開業するための施設基準を満たしている物件が見つかれば、改修工事などに掛ける費用を抑えられます。
また、土地を購入して新しく建物を建設する場合には、かなりまとまった金額が必要です。
1-1. 初期費用と内訳
グループホームの開業ができる十分な広さがある物件が見つかった場合でも、介護法の基準をクリアするために大々的なリノベーションが考えられます。ケースによって違いがありますが、1,000万円以上の資金が必要です。
建物をゼロから建設する場合には、単位が上がり数億円かかるケースもあります。
建物にかかる費用以外には、ベッドなどの設備費、法人設立費用も準備しておきましょう。設備費は、200~600万円が目安になり、会社を設立するための手続きは形態により異なりますが、10〜25万円が目安です。
1-2. ランニングコスト
グループホーム運営時の主なランニングコストは、介護師や看護師などに支払う人件費です。専門職以外にも、掃除や食事を担当するスタッフが必要なこともあります。入居する人数によりますが、職員の人件費は必ずかかる固定費です。
3名の職員を雇う場合には、毎月70万円くらいが人件費としてかかります。また、賃貸物件の場合には家賃も支払い続けますので、大きな支出になります。賃貸物件を契約する場合にも最低でも3ヶ月分の家賃は準備しておきましょう。ひと月15万円なら、3ヶ月で45万円です。
その他には、光熱費、広告費、通信料なども確保しておきましょう。
2. グループホームの開業資金の調達方法
自己資金や家族からの支援の他に考えられる資金調達先は、金融機関や自治体が実施している支援制度です。
日本政策金融公庫の資金援助は金利が低く、銀行や信用金庫よりも条件がゆるいのが特徴です。
開業する資金は必要ですが、返済方法も念頭に入れながら計画をたてることをおすすめします。
3. グループホームに最適な物件の選び方
グループホームは少人数が共同生活を送る場所ですので、同じような役割を果たしている老人ホームとは異なります。
グループホームは認知症の診断書があり要介護2以上が入居条件になり、定員は9人くらいが一般的です。老人ホームは施設によって入居条件や定員が大きく異なり、100人以上が一緒に暮らしていることもあります。
グループホームは少人数のお年寄りを対象にしますので、老人ホームほど大きな施設でなくても開業できます。
3-1. 物件選びの3つのポイント
入居者が安心して暮らせる環境に物件を見つけることが、最大のポイントです。グループホームは少人数が暮らす共同体ですので、ひとりひとりの幸せが口コミとなります。居住環境を整えて、満室を目指しましょう。
・介護法に沿った物件
グループホームの開業には、地方自治体が定めている介護法の基準をクリアすることが必須です。人員や職員などの資格や人数も決められていますが、建物や設備面でも決まりがあります。
賃貸物件や土地や建物を購入する場合には、各自治体が提示している介護法の基準をしっかり把握しておきましょう。
また、設備面でも細かく指定があります。寝室や居間のほかに、食堂や浴室、面談室や事務所、消火設備も基準が決められていますので、事前の確認が必須です。
・家族にも快適なアクセス環境
レストランやカフェを開業する場合にも、多くの人が足を運びやすい立地であることが条件になります。
グループホームの場合には、対象がお年寄りであるケースがほとんどです。
体に不自由があることや、家族が高齢の場合もありますので、目線を入居者に合わせて物件を選ぶことが重要です。
静かな環境であることは望ましいですが、公共交通機関や駐車スペースなども考慮していきましょう。
・入居者が安心して暮らせる環境
入居者とスタッフが一緒に買い物や散歩に出かけることもあります。お年寄りに対しての配慮が整っているエリアを見つけましょう。
歩道が確保されていなかったり、段差が目立つ道ばかりでは、楽しみにしている外出が億劫に感じられてしまいます。
3-2. 契約時の注意点
居住用の賃貸契約と異なりますので、契約内容は多岐にわたり難しく思われることもあるでしょう。隅々まで理解することは必須事項ですが、どうしてもわからない場合には、専門家に相談をすることも選択肢に入れておきましょう。
あとから思っていた契約と違うことがわかっても、契約書にサインをした後に変更はできません。無料相談を行っている行政書士事務所もありますので、きちんと理解をして契約を結ぶことが安定した経営には大切です。
4. グループホームで黒字経営するコツ
ホームページを作成したり、新聞などのチラシを活用して多くの人にグループホームの存在を知ってもらうことが、入居者を増やすポイントです。地元のイベントなどにも積極的に参加をして、オープンな営業方針を進めてきましょう。
グループホームには、認知症の方たちの居場所であるとともに家族の負担を軽減する役割があります。需要があるためにビジネスにはなりますが、グループホームに求められている役割を基盤にすることで、社会的に認知され結果として黒字経営につながっていきます。
5. グループホームの開業に成功した事例と年収
初期費用にどのくらいかかったかにもよりますが、7人の入居者が常時暮らしていると黒字経営にできると言われています。
また、フランチャイズを募集している企業の収支モデルでは、月間営業利益が約66万円とも言われています。
ニーズは右肩上がりの業種ですので、入居者目線で運営を進めていくことで成功する可能性が高まります。
6. 失敗しないグループホームの開業・経営方法の種類
グループホームの開業には大きな開業資金に加えて、複雑な手続きがあります。すでに下地ができ上がっているフランチャイズに加盟して、グループホームを始める人もいます。
6-1. フランチャイズ経営
さまざまな業種が、フランチャイズ経営で始められます。グループホームもそのひとつで、経営や運営のノウハウを伝授してもらえ、看板が使えますのでフランチャイズには大きなメリットがあります。
一方、売上から数%のロイヤリティや加盟金などが発生します。フランチャイズにもメリットとデメリットがありますので、説明会などに積極的に参加して契約内容や開業後の見込み収入などを明白にしておきましょう。
6-2. 個人経営
グループホームの開業は個人でも可能ですが、まとまった資金と複雑な行政への手続きが必須です。フランチャイズを運営している業者と理念が一致しなかったり、グループホーム開業への確固たる思いがある場合には、個人経営を探ってみましょう。
計画を具体的にしていくためには、グループホームの開業をサポートしている業者や行政書士などに相談をすることをおすすめします。
時間とお金を無駄にしないためにも、確実な方法を見つけて進めてくことをおすすめします。
7. グループホームの開業に必要な資格や許可
グループホームを開業するためには、いくつかの必要事項を満たす必要があります。
まずひとつ目は法人格です。グループホームは個人で開業もできますが、法人格の取得が必須です。株式会社や合同会社を設立しなくても、自治体に申請をしてNPOの法人格でも大丈夫です。また医療法人の必要もありません。
次に厚生労働省が指定する基準を満たすことです。申請時には建物の設備だけではなく、スタッフや介護職員数を規定に沿って集めます。市町村の規定も参考にして、運営方針や定員数、料金設定なども行います。
そして、市町村が実施している地域密着型サービスの事業者指定に申請をします。
老人ホームには看護師を配置することが義務になっていますが、グループホームの場合には、看護師ではなく介護師がいるケースがほとんどです。
8. まとめ
グループホームを開業するためには、まとまった金額が必要になります。認可を得るための設備投資や家賃、スタッフに支払う費用など事前に考慮しておきましょう。もちろんすべてを自己資金で準備する必要はありませんが、返済していくことを考えた資金繰りをすることは基本です。
今後も高齢化が進むことは確実ですので、グループホームの需要は見込まれます。必要な条件や資格を整えて開業をはじめたら、入居者の立場にたった運営を心がけながら、黒字経営を目指しましょう。