パティスリーの初期費用、ランニングコストなどの開業資金をまとめました。初期費用には、物件取得費や設備の費用などがあります。ランニングコストには、人件費や材料費などを含みます。資金調達のポイントは、政府系の金融機関や支援制度を利用することです。
パイやケーキなど、小麦粉の生地を使った洋菓子を提供するパティスリー。独立開業して自分の店を持ちたいという人も多くいます。
開業のためには資金の調達が必要ですが、どのくらいの資金を集める必要があるのかわからないものです。
そこで今回は、パティスリーの開業資金の内訳や資金の調達方法についてわかりやすく解説します。物件探しのポイントや独立開業で成功するコツも紹介していますので参考にしてください。
もくじ
1. パティスリーの開業資金
パティスリーの開業で必要な資金を計算するときには、開業前にかかる初期費用と開業後にかかるランニングコストに分けることができます。それぞれの費用は以下のとおりです。
1-1. 初期費用と内訳
開業する地域や店舗の規模によって異なることもありますが、パティスリーの開業資金は、490~800万円です。内訳は以下のとおりになるので参考にしてください。
物件取得費
店舗物件を借りたり購入したりする費用のことです。物件取得費には、初回家賃や保証金、仲介手数料が必要です。
不動産会社にもよりますが、保証金は家賃の6~10カ月分、仲介手数料は家賃の1カ月分がかかります。もし13万円の物件を借りる場合には、104~156万円の資金が必要です。
内装工事費
取得する物件をパティスリーの店舗として使用するためには、内装工事を施さなければなりません。依頼する業者によって費用は異なりますが、1坪あたり30~50万円が一般的な相場です。13坪の物件の場合は、390~650万円の費用かかります。
設備の費用
内装工事が終わったあとは、パティスリーの経営に必要な設備の購入が必要です。パティスリーで必要な設備として、以下のものがあります。
・冷蔵庫
・調理道具
・ショーケース
・調理設備
すべて新品でそろえる場合には、200~500万円の費用がかかります。初期費用を少しでも安くおさえたい人は、中古やレンタルなどの利用を考えてみましょう。
1-2. ランニングコスト
パティスリーのランニングコストは、開業する店舗によって大きく異なりますが、80万円ほどを目安にしておくとよいでしょう。
パティスリーを開業してもすぐに顧客を集めることは難しく、安定した収入を得るために数カ月かかることもあります。そのため、開業前には3~6カ月分のランニングコストを用意しておきましょう。
パティスリーの運営で必要なランニングコストと費用の目安は以下のとおりです。
・人件費:27万円
・水道光熱費:5万円
・店舗の家賃:13万円
・仕入れ代金:30万円
・包装用紙などの消耗品費:3万円
・通信費:1万円
・宣伝広告費:2万円
2. パティスリーに必要な開業資金の調達方法
パティスリーを開業するには、1,000万円以上の資金を用意しなければなりません。
資金の調達方法としては、以下の方法があるので参考にしてください。
・日本政策金融公庫の融資を利用する
日本政策金融公庫とは、政府が100%出資している金融機関です。中小企業への融資が業務の中心なので、しっかりとした準備をしておけば融資をしてもらえます。
・助成金や補助金を活用する
補助金や助成金とは、国や地方公共団体から受け取ることのできるお金です。新規事業の立ち上げを応援するための制度なので、パティスリーの開業についても条件が整っていれば利用できます。
助成金や補助金のメリットは、返済不要であるということです。返済のためのリスクがないので、安心して経営ができるでしょう。
3. パティスリーに最適な物件の選び方
パティスリーの事業を成功させるには物件選びも重要です。ここでは、パティスリーに最適な物件の選び方として3つのポイントを紹介します。
3-1. 物件選びの3つのポイント
繁華街や商店街がおすすめ
物件選びで一番注意したいことは人の流れです。人の流れが多い地域に開業すれば多くの人に認知してもらえるので、購入してもらえるチャンスも高くなります。
ただし、繁華街などの地域で物件を借りると家賃も高くなります。家賃が高額になると経費が高くなるというリスクが出てくるので注意しましょう。
家賃の目安は売上の10~15%です。家賃が売上の15%以上になる場合は、慎重に検討することをおすすめします。
コンセプトに合わせて地域を選ぶ
パティスリーに適した物件を選ぶときには、店のコンセプトに合わせることが重要です。
原材料などにこだわりをもったパティスリーを開業する場合は、ビジネス街よりも主婦の多い住宅街がよいでしょう。価格で勝負したい場合は、人通りの多い地域を選ぶほうが購入してもらえやすくなるのでおすすめです。
味に自信があれば、住宅街でも開業できる
パティスリーの店舗に訪れるのは主に女性です。女性は味に対するこだわりが強い傾向にあるので、多少遠方でも通ってもらえる場合があります。そのため、幹線道路沿いや住宅街に店を構えても、味がよければ定期的に購入してもらえるでしょう。
3-2. 契約時の注意点
開業に適した物件を見つかったならすぐに契約を交わしたくなるものですが、契約を申し込む前に必ず「契約条件」を確認しましょう。契約条件には注意しておきたい3つのポイントがあります。
実質の賃料を計算する
賃料の情報には1坪あたりの価格を記載しています。しかし、実際に店舗を借りるときには、共益費や管理費、保証金の金利などの費用が必要になるので注意しましょう。また、店舗によっては、ゴミ捨てに関する費用を請求することもあります。そのため、店舗を借りる前に実際にかかる賃料がどのくらいかかるのかを確認しておきましょう。
退去の条件をチェックする
契約の段階で退去のことを考える人は少ないかもしれません。しかし、大家とのトラブルを避けるためにも、退去の条件は必ずチェックしておきましょう。主なチェック項目は以下のとおりです。
・保証金はどのくらい戻ってくるのか
・内装については、大家に売ることができるのか
・居抜き物件の場合は、どこまで原状回復をする必要があるのか
契約書の内容は、契約者によって異なります。退去についての事項を読み、不明なことや心配なことがあれば大家に聞いておきましょう。
大家の人柄を確認する
長期で契約を結ぶ場合には、店舗の持ち主である大家の人柄も確認しましょう。大家の中には、契約内容の変更を要求したり、賃料の値上げを言ってきたりする人もいます。
営業を続けるために安易に大家の要求に応じてしまうと、後々大きなトラブルに発展する可能性もあるので注意しましょう。
4. パティスリーの独立開業で成功するコツ
パティスリーの独立開業で成功するコツは、「他店との差別化を図ること」です。そのために、以下の2つのポイントをおさえましょう。
こだわりのあるメニューを用意する
成功しているパティスリーの中には、一つのメニューにこだわって成功した人もいます。他店に負けない自信のあるメニューを用意しておけば、そのメニューのために訪れる人も多く、安定した収益を上げることができるでしょう。
本場のメニューを用意する
パティスリーが提供する商品の中には、一部の国や地域だけでしか食べられていないようなものもあります。他店にはない商品があれば、集客がしやすくなるでしょう。
5. パティスリー開業の成功事例と年収
パティシエの平均年収は300万前後ですが、開業した人の中には年収が500万円以上の人もいます。
あるパティスリーのオーナーは、コンクールに参加して実績を作り顧客の獲得に成功しています。お菓子の研究をして他店には負けないオリジナルのメニューを考案し、コンクールに参加しました。その結果、優勝という成績を収めることができ、テレビや雑誌のメディアの注目を集めるようになっています。その結果、数十億円の売上を達成しました。
6. 失敗しないパティスリーの開業・経営方法の種類
パティスリーの開業や経営には2つの方法があります。自分に合った方法を選ぶようにしましょう。
6-1. フランチャイズ経営
フランチャイズ経営のメリットは宣伝のしやすさです。ブランド力のあるパティスリーに加盟して開業すれば、開業直後から多くの顧客を獲得できます。また、本部がメニュー作りをするので、営業に集中できるのも魅力です。
また、フランチャイズの多くは、本部による開業前の研修や開業後の経営のサポートなどを用意しています。そのため、売上が伸びないときでも、本部に相談することで経営の立て直しができます。経営のリスクを下げたい人は、フランチャイズ経営がおすすめです。
6-2. 個人経営
個人経営のメリットは自由な経営ができることです。店のコンセプトや提供するメニュー、店内の内装などをすべて自分で決めることができます。そのため他店との差別化が図りやすいでしょう。
また、フランチャイズ経営では、加盟金やロイヤリティを本部に支払わなければなりませんが、個人経営なら支払いが発生しないので経費をおさえることもできるでしょう。
7. パティスリーの開業に必要な資格・許可
パティスリーを開業する場合に必要な資格や許可は以下のものがあります。
食品衛生責任者
パティスリーなど食品の製造を行う人については、食品衛生責任者の資格が必要です。この資格は、食品衛生責任者養成講習会を受講することで取得できます。講習会は月に数回開催しているので、開業前には必ず受講しておきましょう。
製菓衛生師
パティスリーを開業するのに絶対に必要な資格ではありませんが、お菓子を作る技術と知識を持っていることを証明できる資格なので、可能ならば取得しておきましょう。菓子製造業に2年以上勤務するか製菓専門学校を卒業すれば受験資格が得られます。
菓子製造業許可
パティスリーを開業する場合には、菓子製造業許可を保健所に申請しなければなりません。申請は開業の10日前と定めていますので、忘れずに申請しましょう。
8. まとめ
パティスリーを開業する場合には490~800万円の初期費用と80万円ほどのランニングコストがかかります。オープン直後は集客が安定しない可能性もあるので、数カ月分のランニングコストを用意しておきましょう。
資金の調達方法はいろいろありますが、おすすめは「日本政策金融公庫の融資」と「助成金や補助金の利用」です。しっかりとした事業計画書を作って申し込んでみるとよいでしょう。