斜陽産業と言われているゲームセンター業界で開業し成功させるには? ゲームに対するニーズの変化と、利用客の年齢層多様化に対応した店舗づくりで、安定した経営を目指す方法を解説!
近年は、統計によると一家に一台は据え置き型ゲーム機があるといわれる時代です。このような状況の中で、ゲームセンターは斜陽産業と言われています。しかしなかには、経営方法の工夫により順調に売り上げを伸ばしているゲームセンターもあります。
ここでは、失敗しないゲームセンターの新規開業方法とその経営方法について解説していきます。
もくじ
1. ゲームセンターに必要な開業資金はいくら? その内訳は?
ゲームセンターを開業するにはどの程度の資金が必要なのでしょうか? ここでは必要となる資金とその内訳について説明していきます。
1-1. ゲームセンターの開業資金
個人でゲームセンターを開業しようとする場合、まず一番に考えなければならないのは「どこでゲームセンターを開業するか」ということです。当然繁華街での開業が頭に浮かぶと思いますが、近年ではボーリング場などを併設した大型ゲームセンターを郊外に開業するという手段も多く取られています。
ここでは、繁華街に小規模なゲームセンターを開業する場合の開業資金について考えていきます。
ゲームセンターの開業には思いのほか資金が必要で、小さな店舗を開業するにしても、数千万円の開業資金が必要になります。
次の章でその内訳を説明していきます。
1-2. 初期費用の内訳
まず、モデルケースとして繁華街に20坪の物件を借り、ゲーム機は大型体感型躯体を3台、一体型の躯体を10台、一体型小型躯体を5台設置し、それ以外に小型テーブル型躯体2台の計20台の躯体を購入し、残りはリースの躯体を使用するとして初期費用をシミュレーションしていきます。
まず、店舗の家賃を32万円とすると、物件を確保するために必要な保証金が家賃の8か月分の256万円、敷金・礼金として家賃の二か月分の64万円、合計320万円が必要となります。
ゲーム機を30台導入する費用として1,050万円、内装や空調など、店舗改装費用として300万円、看板設置に200万円が必要となり合計500万円、市場調査費用として100万円、その他雑費として100万円が必要となります。
これらの費用を合計すると2,070万円、これが個人でゲームセンターを開業する場合に必要な初期費用の概算となります。
個人で開業する以外にも、大手ゲームセンター企業とフランチャイズ契約を結ぶ方法もあります。そのような場合、ゲーム機の導入に便宜を図ってもらうことができるため、初期費用を比較的安く抑えることができる場合もありますが、その代わり加盟料が必要になります。
1-3. ランニングコストの内訳
ゲームセンターを経営していくうえで、当然ランニングコストが発生します。上記の規模のゲームセンターを経営していくうえで必要なランニングコストは、年間で人件費が1,619万円、ゲーム機のリース料が1,530万円、不動産賃貸料が384万円、その他経費が774万円となり、その合計は4,307万円となります。
このランニングコストは初年度のものをシミュレーションしたもので、二年目以降は設備費用が毎年350万円から400万円程度必要になってきます。
2. ゲームセンターの開業資金を調達する方法
ゲームセンターに限らず、新規事業を始める際には開業資金の融資を受ける必要があることがほとんどです。融資を受ける場合にまず思い浮かぶのは銀行ですが、それ以外にも開業資金の融資を受けることができる機関があります。
それは日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫、こっきん)や信用保証協会です。
日本政策金融公庫は国が100%出資する金融機関で、中小企業が資金調達をするうえで欠かすことができない機関です。この日本政策金融公庫は「一般の金融機関を補完する機関」として存在しています。
一般の金融機関を補完するということは、銀行で融資を受けることができない場合に、この日本政策金融機関の融資制度が事業資金や運転資金の調達を助けてくれるという仕組みのことです。
一般的な銀行に比べて融資が受けやすく、利息などの貸し付け条件が良いことがこの日本政策金融公庫の特徴となっています。しかし、ここから融資を受ける場合には、審査に3週間から1か月程度の時間がかかるので、早めに融資の申し込みを行うようにしましょう。
日本政策金融公庫で融資を受けるメリットは、前述した融資条件の良さ以外に、融資の相談がしやすく、事業のアドバイスを受ける事ができるという点もあります。また、他の金融機関の融資審査が通りやすくなるというメリットもあるので、その後の運転資金の調達が円滑になるという点も挙げられます。
次に信用保証協会についてですが、この機関は信用保証協会法に基づいて中小企業や小規模事業者の金融円滑化を目的として設立されたものです。開業資金や事業の運転資金の融資を金融機関から受ける際に、信用保証協会が信用保証をすることで、資金調達の手助けをしてくれます。
このような方法で資金調達を行うのが一般的ですが、日本政策金融公庫や信用保証協会の審査に落ちてしまった場合には、どのようにして開業資金を調達すればよいのでしょうか?
そのような場合は、改善点を見つけて事業計画を練り直し、再度融資の申し込みを行うことが可能です。ただし、再申し込みを行うには半年以上期間を空ける必要があります。日本政策金融機関は銀行と比べて融資の審査が甘いことが特徴なので、その審査に落ちた状態で他の金融機関から融資を受けることは難しいと考えておきましょう。
3. ゲームセンターの物件選びのポイントと契約時の注意点
ゲームセンターを開業するにあたって、物件選びは非常に重要なファクターとなってきます。ゲームセンターに適した物件の一番の条件は、人通りが多い場所にあるということです。繁華街の中であれば立地条件として申し分ないといえるでしょう。
近年では郊外型のゲームセンターも増えてきていますが、郊外にポツンとゲームセンターのみがあっても、集客は難しいと考えざるを得ません。郊外でゲームセンターを開業する場合、周囲にテーマパークがある場所や、ショッピングモールの中の物件を選ぶことをお勧めします。
さらに郊外に開業する場合には、車で来店するお客様がほとんどなので、大型駐車場があることも重要な条件となります。
また、繁華街と郊外、どちらの場合にも言えることですが、もともとゲームセンターがあった場所に開業することはあまりお勧めできません。一見設備などを再利用できるので、初期費用が抑えられるメリットがあると思われがちですが、前のゲームセンターが廃業したということは、もともとゲームセンターを開業することに向いていない地域または物件であったと推測されるからです。
もし、ゲームセンターが入っていた後に同じ物件でゲームセンターを開業する場合には、前にあったゲームセンターにどのようなゲーム機が置いてあり、どのようなお客様をターゲットにしていたかをよく調べて、それとは異なったコンセプトの店舗にしましょう。
4. ゲームセンターのような店舗ビジネスの問題点と成功のコツ
ゲームセンターのような店舗型ビジネスにはどのような問題点があるのでしょうか? ここではゲームセンター経営の問題点と成功のコツについて解説していきます。
4-1. 家庭ではできないゲーム機を導入
一口にゲーム機と言ってもさまざまな種類があります。一般的なゲーム機、プリクラなどの写真印刷型ゲーム機、メダルゲーム機、クレーンゲーム機などです。
家庭用据え置きゲーム機の普及によって一般的なゲーム機は需要が低くなってきています。開業するゲームセンターに導入するゲーム機を選ぶ場合、プリクラ、メダルゲーム機、クレーンゲーム機など、家庭に置くことが難しいゲーム機を導入するようにしましょう。
4-2. 集客活動に力を入れる
ゲームセンターの集客活動として考えられるのは、看板の設置とチラシのポスティングです。看板は大きく目立つように設置し、ポスティングもこまめに行うようにしましょう。
4-3. 店舗名に地域の名前を入れる
近年では、店舗型ビジネスを行っているお店をインターネットで検索するケースもあります。その場合、検索キーワードとして「ゲームセンター 埼玉 川口市」というように、地域名を入れて検索することが一般的です。
このとき、店舗の名称を「ゲームセンターKAWAGUCHI」というように地域の名前を入れておくと、検索結果の上位に表示されやすくなります。インターネットで検索上位に表示されるよう、店舗名に工夫を凝らすことも大切です。
5. ゲームセンター経営の成功事例と年収
成功するゲームセンターの事例として「CARDBOX」が上げられます。
「CARDBOX」が成功している理由として、立地が駅前である、店内飲食・喫煙可能、遅い時間まで営業している、UFOキャッチャーなどの売り上げが良い、トレカユーザーも利用できる店舗にしているという理由があります。
このトレカユーザーを店舗に集めることが「CARDBOX」の経営成功の大きな理由の一つです。なぜなら、トレカユーザーはゲームセンターのゲーム機も利用するため、ゲーム機を利用するお客様も多くなり、それに比例して売り上げも上がるためです。
「CARDBOX」はかなり成功しているゲームセンターなので、一般的な個人経営のゲームセンターより営業利益は高いものと考えられます。先に紹介した規模のゲームセンターの場合、二年目以降の年収としては、オーナーの年収は350万円から400万円程度になるでしょう。
6. 失敗しないゲームセンターの開業・経営方法
失敗しないゲームセンターの経営方法は、顧客の年齢層を的確に把握し、設置するゲーム機を決めることです。現在、子どもから30代までの年齢層の間でカードゲームのデュエルが流行っています。そのため、その場所を確保しておくと、自然と若いユーザーが集まるようになるでしょう。
そしてその年齢層に受けが良いゲーム機を設置することで、利益を上げることが可能になります。これ以外にも郊外型のゲームセンターの場合には、メダルゲームを設置するとよいでしょう。郊外型のゲームセンターは家族連れが来店しやすいのが特徴で、メダルゲーム機を設置していれば、子どもだけではなく、大人も遊びやすくなるため、売り上げの増加が見込めます。
このように、開業する場所に来店するお客様の、ゲームに対するニーズに応える店舗づくりを行うことが、ゲームセンターの経営を行う上で重要な要素となってきます。
7. ゲームセンターを開業するために必要な資格や許可
ゲームセンターを開業するためには、さまざまな条件をクリアして許可を得る必要があります。その内容とは、
・都市計画法で定められた「住居専用地域」、「住居地域」、「準住居地」以外で開業しなければならない
・各年齢に応じて立ち入り制限を行う必要がある(18歳未満は午後10時まで、16歳未満は午後6時までしか入場できない)
・大学を除く学校から100m、図書館・児童福祉施設・大学・病院及び診療所(入院施設あり)から70m、商業地域であれば50m以上離れた場所でしか開業できない
といった開業場所の制限と、
・成年被後見人または被保佐人として登録されている人
・破産者で復権を得ていない人
・一年以上の懲役または禁錮刑に処せられた人、風営適正化法・入管法その他関連法案に違反し一年未満の懲役または罰金刑に処せられてから五年以上経過していない人。
・風俗営業の許可を取り消されてから五年以上経過していない人
・薬物中毒者
上記に該当する人は、営業の許可を受けることができません。
開業場所と開業者の条件を満たせば、営業の許可を得ることができ、特に資格を取得する必要はありません。簡単に言ってしまえば、立地の規制条件に抵触しなければ、普通の生活を送っている人がゲームセンターを起業するということは、難しいことではありません。
8. まとめ
ここまで、ゲームセンターを新規開業するための開業資金とランニングコストの内訳、その調達方法、ゲームセンター経営の成功事例と一般的な年収、ゲームセンターを開業するために必要な条件などについて解説してきました。
以前はゲームセンターは若者が集まる場所といったイメージがありましたが、今では高齢者や主婦などがメダルゲームの利用のためにゲームセンターを利用するケースも多くなってきています。もちろん従来の若者向けのゲーム機やクレーンゲーム機、プリクラなども改良を重ねられているため、工夫次第で利益を上げることは十分に可能です。
そのためには、立地とそこに集まると予想されるお客様の年齢層を詳しく分析して、その年齢層に合ったゲーム機を設置するようにするとよいでしょう。