デイサービスは安定したニーズがあり、不動産活用、独立起業の視点からも注目の業界です。収入の9割が介護保険からの報酬で、認可や資格が絡んでくる特徴があります。デイサービス事業の開業資金と黒字経営のコツについて解説していきます。
デイサービスは、高齢化社会が進む中でなくてはならないサービスです。収入の多くは介護保険からの支払いのため、手堅いイメージがありますね。
認可の手続きなどわかりにくそうですが、介護関連の資格をもたない業界未経験者でも経営者になれるのでしょうか?気になるデイサービス開業資金や黒字経営のコツについてみていきましょう。
もくじ
1. デイサービスに必要な開業資金
デイサービスの開業には、国の基準を満たした建物やスペース、設備、スタッフを準備するだけでなく、法人格を持っていることが条件になります。規模や開業場所によって違いますが、1,500万円~2,000万円が開業資金の目安です。
1-1. 初期費用と内訳
・駐車場つきの物件を借りる:30坪くらいで150万円程度
・内装などリフォーム費用:600万円程度
・リハビリ用器具:500~600万円程度(リースなら初期費用が安い)
・事務や通所者用設備(PC・テレビ・椅子・テーブルなど):150万円程度
・車両費:160万円程度(中古ワゴン車80万円×2台として)
・法人登記費用:25万円程度
・広告費(ホームページやパンフレット):30万円程度
中古品やリースを組み合わせてコストダウンすることもできますが、リハビリ用機器や入浴施設など高額になる場合もあります。また、デイサービス施設として認可を受けるために、法人格が必要なため、法人登記にかかる費用も初期費用に入れておきましょう。
1-2. ランニングコスト
・人件費(健康保険や雇用保険、年金費用もかかる)
・物件賃借料
・機器をリースで利用する場合、リース料
・水道光熱費
・車両費(購入の場合、維持費・リースの場合、リース費用。ガソリン代も。)
・旅費交通費
・通信費
・医薬品費
・消耗品費
・請求ソフト使用料
・委託費
・その他
定員を増やすと月収の上限が増えますが、ランニングコストも増えていきます。十分なリサーチと予定定員分の利用者の確保で、収支のバランスを取りたいですね。
人件費は一人あたり1ヶ月15万円~25万円。認可施設として必要な資格者、職種の職員をそろえるには、4~5名が必要です。人件費だけで100万円くらいかかる計算になるため、他の部分を切り詰めても150万円前後の支出が見込まれるのではないでしょうか。
収入の多くは介護保険を通じて支払われる利用料ですが、サービス提供から2ヶ月後の入金です。料金発生から入金までタイムラグが出てくるため、最低3ヶ月無収入でも経営が成り立つ資金が必要になります。
オープンしてから利用者数が安定するまでのゆとりとして、半年分の運転資金をみておきたいですね。
2. デイサービスの開業資金の調達方法
まずは、日本政策金融公庫にあたってみましょう。事業の具体的な計画、それを裏付ける資料、収支計算書を整えて出向くと、相談に乗ってくれます。
銀行は融資の審査がシビアなため、いままでの取引状況や事業計画の裏付けがなければ難しいです。その点、信用金庫は地域貢献事業に積極的なカラーを持っているため、地域の事情によっては融資に成功するかもしれません。
融資成功の条件は次のようなことが挙げられます。
・融資対象者に社会的な信用がある
・自己資金が融資希望額の1/2程度ある
・具体的な計画資料が整っている
・営業に必要な認可が取れる見込みがある
3. デイサービスに最適な物件の選び方
デイサービスに適した物件を選ぶ時には、場所、広さや設備など、基準をクリアしていることが基準になります。物件の選び方のポイントを、もう少し詳しくみていきましょう。
3-1. 物件選びの5つのポイント
デイサービス施設として利用する物件は、他の業種と違った条件があります。施設の性質上、押さえておきたい5つのポイントを紹介しましょう。
・駐車場があり車の乗り付けがしやすい
足が不自由な高齢者も利用するため、車での送迎、玄関先での乗り降りができる場所でなければ困ります。緊急で救急車を呼ぶ場合もあるため、建物前にスムーズに停車でき、道路へのアクセスが良いことが求められます。
・道路や鉄道路線などが整っている
利用者は送迎が主体だからと見落としがちなのが、職員の通いやすさです。アクセスが不便な場所にあると、利用者だけでなく職員の募集にも苦労することになります。道路や鉄道路線の使い勝手がどうなっているのかチェックし、立地が原因で人集めに困ることがないように物件候補を選定していきたいですね。
・小規模施設では市区町村の境界が近くにないところ
2016年度から、地域密着型通所介護の施設では同じ自治体に住んでいる高齢者を対象者にすることとなりました。これにより、小規模施設となる定員18名以下の施設では、施設と同じ市区町村の新規申込者しか受け入れることができません。
そのため、近隣の地区町村との境界付近の物件では商圏が狭まり集客に不利になる可能性があります。距離的には通所しやすいエリアでも受け入れできない事例がでてくるので注意が必要です。
・デイサービス施設としての基準をクリアできる
デイサービス施設して認可を受けるには、一人あたりの広さや、設置設備の決まりなど、基準をクリアしなければなりません。トイレは車椅子対応のものを複数台設置、相談室や事務室は専用スペース、浴室の設備が必要となっています。
必要なスペースが用意できる広さ、間取りなのかチェックして物件選びをしましょう。
・貸主がデイサービス施設としての使用を認めている
賃貸物件を選定するときには、デイサービスとしての使用を認めているか確認したうえで交渉を進めましょう。貸主がデイサービス施設への貸借に乗り気ではなく、計画が途中で変更ということにでもなれば、手続きがやり直しになり、準備にかかる時間とお金が膨らんでしまいます。
使用目的や改修工事などについて、事業の内容を確認してもらって進めるのが安心です。
3-2. 契約時の注意点
バリアフリーやトイレ改修など、リフォームが必要になることが予想されます。どこまでの工事が認められ、退去の原状復帰の条件はどのようになっているのか確かめましょう。
同じ業種が使っていた設備をそのまま借りる居抜きでは、初期費用を安くできるものの、古くなっている、見栄えが悪いということがあります。また、以前の借り主の経営時に、利用者のニーズがない、競合相手が近くにいるなどのマイナス要因があって、廃業したのかもしれません。
居抜きで初期費用が軽くなるメリットはありますが、廃業の原因を調査し、同じ場所で開業して黒字にできるか、計画を十分に検討しましょう。
4. デイサービスで黒字経営するコツ
・認可にあう条件を予算内で整える
・介護保険からの収入に2ヶ月のタイムラグがあることを見越した収支計画
・固定の利用者を獲得する
・規模19名以上を含んで複数事業所を経営すると安定しやすい
・ゆとりをもって開業資金を準備する
・所持不動産を活用すると地代家賃にかかる費用が激減する
特に福祉系の資格がなくても経営者になれますが、介護保険法などルールを押さえて経営方針を立てることが必要です。知識に自信がない場合には、コンサルタントの力を借りてノウハウを磨いていかなければなりません。
また、所有不動産を活用してデイサービスを開業する場合には、費用の面で大変有利になります。資産活用として開業するという選択で黒字経営に成功というケースもあるでしょう。
5. デイサービスの開業に成功した事例と年収
デイサービスの経営者の年収は、500万円前後の方もいれば1,500万円くらいという経営者もいます。年収1,500万円であれば、魅力的ではないでしょうか。
ただし、サービス料金は、介護保険のなかの介護報酬というもので決められているため、事業所の規模で、ある程度収益の上限が決まってきます。10名定員規模で360万円くらい、15名定員960万円くらい、20名定員で1,500万円くらいです。
事業を成功させている事例の共通点は次の通りです。
・ある程度の規模で定員に見合った利用者を獲得する
・質の良いサービスを提供する
・介護保険制度、施設ルールの特徴を理解した資金計画を立てている
事業の成功には「業界のノウハウをつかんだ経営」が大事ですが、デイサービス経営のノウハウには、介護保険や福祉制度などの専門知識が大きく影響しています。経営に資格は必要ないですが、専門家を使って社会に役立つサービスを切り盛りする能力が必要です。
6. 失敗しないデイサービスの開業・経営方法の種類
ノウハウの体系化が進んでいない業界への参入は経験が頼りです。しかし、デイサービス事業は、福祉制度のルールが決まっているため、制度に沿った経営計画を立てることで安定しやすい業界です。開業・経営方法の種類をみていきましょう。
6-1. フランチャイズ経営
フランチャイズ経営ではロイヤリティが発生しますが、ノウハウを得ることができ、経営アドバイスを受けることができます。系列施設がすでに広がっている場合、ネームバリューを生かして集客や、職員を集めやすいのもメリットです。
「福祉関係の知識が豊富ではないけれど、これから社会貢献になる事業経営したい」と考える人が安定経営できる確率が高い業態です。脱サラ経営者、不動産活用で事業をはじめたいと言う方に向いています。
6-2. 個人経営
個人経営の場合、デイサービスや福祉関係の現場を知っている、資格や認可について知識があることが重要です。社会貢献事業がしたいという意気込みだけで、専門知識がないまま飛び込むのは不安です。
制度を熟知して的確な手順を踏めなければ、施設開設の認可を取るのにも苦労します。施設で経験を積んで現場勤務に自信があっても、有能なコンサルタントに相談しながら進めたほうが良い場面が出てくるでしょう。
7. デイサービスの開業に必要な資格や許可
デイサービス運営者として認可を受けた法人であることが開業の条件です。この他に経営者になるための特別な資格はありません。担当業務に合った資格を持った方を雇用して現場を回して行くため、誰でも経営者になるチャンスがあります。
職員に必要な資格の例としては、生活指導員「社会福祉士・社会福祉主事」、看護職員「看護師」、機能訓練指導員「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など」などです。
8. まとめ
・デイサービス開業資金は1,500万円~2,000万円
・黒字経営のポイントは収入の9割を占める介護保険の理解
・介護関連の資格をもたない業界未経験者でも手堅い経営計画で黒字経営が可能
まとまった資金融資を受けるには、介護保険法を理解した上で詳細な事業計画を立てることがかかせません。コンサルタントを利用しながら手堅い経営を実践することが、黒字経営のコツになります。