アパレルショップの開業は、ファッション好きにとって憧れです。特に近年はアパレルショップが増加していますから、開業の需要も高くなっています。そんな開業を夢見ている方に役立つ「開業資金」「黒字経営のコツ」「物件の選び方」を紹介しています。
近年増え続けているアパレルショップ。開業にも非常に適しています。しかし開業するには最低1,000万円の資金が必要になり、毎月かかるランニングコストについても理解しておかなければいけません。ここではまず、開業資金について説明します。
もくじ
1. アパレルショップの開業資金
年々増加しているアパレルショップ。売上も右肩上がりなので、アパレルショップの開業を検討している方も多いのではないでしょうか。まずは開業するにあたり必要になる資金(初期費用・ランニングコスト)を説明します。
1-2. 初期費用と内訳
開業すると最初に必要になるのが「初期費用」です。一般的に物件費・内装費・設備費・広告費・人件費などが必要になります。
物件費は、その名のとおりアパレルショップを始めるためのお店です。どんな物件が適しているかについては後述しますが、広さや立地などによってかかる費用は異なります。自宅を改装して使用することもできますが、お店と自宅が兼用になるので十分考えてから実行しましょう。
内装は、お店のコンセプトに合わせると目に留まりやすいですし、お客さんにも覚えてもらいやすくなります。また取り扱うブランドによっても変わってくるでしょう。ハイブランドになると坪100万円ですが、一般的なアパレルショップであれば坪10万円が平均です。
設備費は、ハンガーや棚、マネキンなど、アパレルショップで使う備品を指します。こちらはお店の規模によっても変わってきます。
そして力を入れたいのが広告費です。売上の10%がベストと言われていますので、積極的に売り出す必要があります。
そして、高くなると言われているのが「仕入れ費」です。専門店であればそのブランドの服やバッグなどを仕入れることができれば良いですが、セレクトショップになるといろいろなブランドを取り扱うので費用は高くなります。高級ブランドなどの場合には1,000万円前後かかる場合もあるでしょう。
これらすべてを総合すると、一般的なアパレルショップの場合初期費用は1,000万円程度を見積もっておくとよいでしょう。
1-3. ランニングコスト
ランニングコストは、毎月かかる費用です。家賃や水道光熱費はもちろんのこと、広告費や仕入れ費などもあり、アパレルショップの場合は比較的ランニングコストがかかりやすい傾向にあります。ですので、いかに節約できるかが重要になります。
ランニングコストは店舗の規模や仕入れにいくらかかるのかによっても大きく変わりますが、アルバイトが2~4名程度いるような規模のアパレルショップの場合には月間で150万円~200万円程度を想定しておくとよいでしょう。
一般的に賃貸面積が大きいほどランニングコストがかかると言われていますので、毎月支払う費用を抑えたいという場合は無理に広いお店にする必要はありません。
また、開業資金にランニングコストを含めて準備しておくことも大切です。ランニングコストはお店が赤字でも毎月支払わなければいけないので、開業資金がギリギリだとマイナスになってしまいます。オープンから3ヶ月は支払えるくらい用意しておくようにしましょう。
2. アパレルショップに必要な開業資金の調達方法
開業資金の調達方法は、「アパレルショップだから○○で借りる」というような決まりはありません。基本的に「日本政策金融公庫」「助成金」「社債」「消費者金融」などを利用するケースが多くなっています。
もちろん、全額借入れするのではなく、自己資金と合わせて不足している分を借りるようにします。できれば自己資金が多いほうが返済はラクになりますが、アパレルショップは開業に最低1,000万円必要になると言われていますから、半分の500万円は準備しておいたほうが安心です。
もっとも利用されているのは「日本政策金融公庫」です。「新規開業資金」「女性、若者/シニア起業家支援資金」などが代表的ですが、最大7,200万円まで融資を受けることができ、金利も低いので起業家にとってはかなり有り難いサービスでしょう。
3. アパレルショップに最適な物件の選び方
少しでも多くのお客さんに来店してもらうように、物件選びも重要です。ここでは、アパレルショップに最適な物件の選び方を紹介します。
3-1. 3つのポイント
・コンセプトを明確にする
良い物件を選ぶためには、まずお店のコンセプトを明確にすることが重要です。コンセプトと立地、そしてお店の雰囲気がすべて合致して、はじめてお客さんが数多く来店してくれるようになります。継続してお客さんが来てくれないことには売上に繋がりません。そのため「かっこいい物件」「魅力的な物件」といった尺度だけで選ぶのではなく、まずは開業したいアパレルショップのコンセプトを明確にし、それに合致する物件を探していくことが重要です。
「高級志向でいきたい方」と「安く良いものを売りたい方」ではコンセプトがまったく違います。たとえば高級店なら、それに見合った立地があります。それくらい「お店のコンセプト」はとても重要になるのです。
・スケルトン物件を選ぶ
スケルトン物件とは、配管やコンクリートなどがむき出しになった、装飾等が一切ない物件のことです。スケルトン物件はお店のコンセプトに合わせて自由に内装を変えることができるので、アパレルショップの開業に人気があります。アパレルショップは「入ってみたい」と思わせる外観や内装が重要になりますから、自由に内装を施すことのできるスケルトン物件は押さえておきたいところです。
ただ工事費などコストがかかるため、予算に余裕がない方は射抜き物件を選ぶようにしましょう。居抜き物件でも以前アパレルショップを経営していたところならおすすめです。
・人が集まりやすい立地を選ぶ
人気のあるブランドであれば辺鄙な場所にあってもわざわざ足を運んでもらえますが、そうでない場合は人が集まりやすい好立地がベストです。要するに都心部ほどアパレルショップを成功させやすいというわけです。
たとえば、東京なら原宿・表参道が人気です。主に若者が多く集まる場所ですが、だからこそ集客に繋がりやすく、売上にも繋がります。
性能や機能性も重視する
コンセプトばかり意識して、物件の性能や機能性を無視することはできません。床材は滑りやすくなっていないか、商品を置く場所に凹凸はないか、安全に商品をぶら下げることができるかなど細かいところまでしっかり確認しておきましょう。
特に築年の古い物件は劣化していますから、レトロな雰囲気がアパレルショップに適している反面、性能や機能性は劣る可能性があるので注意してください。
3-2. 契約時の注意点
いざ契約してから「きちんと確認してから契約すれば良かった」ということのないように、契約前にはその内容についてしっかりと確認しておくことが大切です。
確認事項でもっとも重要になるのが「解約時の条件」になります。ほとんどの物件は3年契約になっていますが、なかには契約期間が異なる場合があるのでしっかりチェックしておいてください。
次に、「大家さん」です。誰だって、人柄の良い大家さんを選びたいもの。きちんと対応してくれる大家さんであれば、契約時のトラブルも防げますし信頼関係も築きやすくなります。
居抜き物件の場合は、以前のお店がどんな理由で閉店したのか、劣化している個所はないかなども契約前にチェックしておきましょう。スケルトン物件の場合でも、コンクリートむき出しのところもありますので注意してください。
決めたことはきちんと契約書に明記してもらうなど、口約束にならないことも重要です。
4. アパレルショップで黒字経営するコツ
アパレルショップで成功し続けるには、いくつかの「コツ」があります。1つ目は、「ネットショップを活用する」ことです。オープンしてすぐにオンラインショップを開く必要はありませんが、将来的に取り入れるとやはり売上に繋がります。「どこに住んでいても買い物ができる」というのはそのお店の強みになります。
2つ目は、「在庫管理をしっかり行う」ことです。アパレルショップは季節によって新作が登場するので、商品の回転率が高く管理が行き届いていないと大変なことになってしまいます。なるべく在庫を抱えないように需要と供給をきちんと考えて管理するようにしてください。
3つ目は、「損益のシミュレーションを行うこと」です。資金計画がしっかりできているお店はやはり黒字経営になりますし、どこがマイナスになっているのかすぐに把握し改善することができます。
5. アパレルショップの開業に成功した事例と年収
インターネットが主流の昨今、アパレルショップの開業で成功した方はネットショップを活用しているケースがほとんどでした。今やネットショップだけで稼げる時代ですから、店舗とネットショップを併用すれば成功しやすくなるのも頷けます。
他には、ターゲットを絞って成功した事例もあります。たとえば、ベビー服専門店やアウトレット商品のみの取り扱いなど、ターゲットを絞るということはそのお店のコンセプトも明確になっているというわけですから成功しやすいのでしょう。
ちなみに年収ですが、一般的なアパレルショップでは250万円~400万円程度の場合が多くなっています。しかしターゲットを絞る、ネットショップを活用していくなどの工夫で1,000万円以上を目指すことも十分に可能となります。様々な工夫を行うことで、効率的に運営して売り上げを伸ばしていくこと可能です。
6. アパレルショップの開業に必要な資格・許可
アパレルショップを開業するにあたり、必須ではありませんが取得しておいたほうがよい資格がいくつかあります。まず「ファッションビジネス能力検定」です。「一般財団法人日本ファッション教育振興協会」による検定試験で、ファッションビジネスを始めるうえでは取得しておくべきだと言えます。
次に「ファッション販売能力検定」です。その名のとおり、服を販売するために必要となる知識や技術、接客の基本などを測ります。階級は1~3級まで。それぞれ就ける仕事が異なります。
最後に「リテールマーケティング検定試験」です。いわゆる「販売士」のことで、販売や接客の技術、マーケティングなど販売に関するさまざまな専門知識を学ぶことができます。
許可は、「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出することになります。また確定申告も必要ですし、ネットショップを活用する場合も中古品を取り扱っている場合は「古物商許可」が必要になるでしょう。
7. まとめ
アパレルショップの初期費用は一般的なお店でおよそ1,000万円、さらにランニングコストとして150万円~200万円の3か月程度分が必要になることがわかりました。開業資金としては大きな金額が必要になりますが、成功すれば年収1,000万円以上も十分に狙える業種ですので夢があるといえるでしょう。近年増加傾向にある職種ですから、ファッションに興味がある方やステップアップしたい方はぜひ開業を視野に入れてみてください。