懐かしい思い出はあるものの、今の時代に駄菓子屋の開業が可能なのだろうか?と疑心暗鬼になるでしょう。利益率の低い駄菓子屋経営ですが、工夫次第で職業として確立できる道があります。開業方法、初期費用、資格や許可など駄菓子屋ビジネスを掘り下げます。
駄菓子屋さんには、多くの人が懐かしい思い出を持っていることでしょう。
学校の帰りに友だちと待ち合わせをしたり、ガムやラムネ、棒付きアイスの当たりが出て喜んだり、子供の頃に通いつめた人も多いはずです。
子供の頃の居場所でもあった駄菓子屋の数がさまざまな理由から年々減少し、1970年に約14万件あった駄菓子屋さんが、2007年には2万5千件にまで激減しています。
子供の数が減っていることも上げられますが、駄菓子は駄菓子屋でなくても購入できること、そしてもともとの利益率が低いことが減少している大きな要因です。
ビジネスとして成り立たせるのは簡単ではありませんが、それでも、駄菓子屋開業に夢をいだき、中には使命を感じて開業する人がいます。
もくじ
1. 駄菓子屋の開業資金
駄菓子屋を始める開業資金は、リフォームをしても200万円かからないと言われ、工夫次第では数十万円で準備が整えられますので、他の業種と比較する開業資金はかなり下がります。
新しいビジネスを始める時には必要な設備を購入したり、内装をリフォームしたり、予想を上回る開業資金がかかるのが一般的で、数百万から数千万円の開業資金が必要なビジネスもあります。
1-1. 初期費用と内訳
すでに営業している店舗の中や自宅の一角を活用して駄菓子屋を始める場合には、賃貸物件を探して契約する必要はありません。
新しい店舗を探す手間が省け、家賃や保証金などの経費を省くことが可能です。
この場合には、リフォームに必要な経費や駄菓子を陳列するための棚やケース代などの費用だけですので、大幅に予算が抑えられます。
中には自宅の車庫を駄菓子屋に改造し、再利用できるものを有効活用することで、初期費用を20万以内に抑えた実践者もいます。
自宅を駄菓子屋として利用できない場合には、家賃や保証金などの予算が必要ですが、駄菓子屋に最適な建物や周辺環境を吟味できるメリットがあります。
駄菓子屋だけに焦点を当てて物件を探す場合には、広い物件は必要ありませんので、賃貸料金も抑えられます。
1-2. ランニングコスト
駄菓子屋を経営していくときに必要なランニングコストは、駄菓子を仕入れるときの代金、光熱費や広告料金です。
駄菓子そのものも単価が低いので仕入れにはそれほど予算はかかりませんが、アイスクリームなどの販売を検討している場合には、毎月の電気代が冷蔵庫の分別途でかかります。
駄菓子屋は地元密着型の商売ですので、広く発信していきたい思いがある場合には、開業前後に使える広告料金を多めに用意しておくといいでしょう。
通常ビジネスを始めるときに、ランニングコストの中で大きな割合を占めるのが人件費です。
アルバイトなどの短い時間勤務でも、ひと月に換算すると人件費は大きな金額です。
開業間もない頃は売上から人件費を捻出することは困難ですので、あらかじめ軌道に乗るまでの人件費を確保しておく必要があります。
ところが、駄菓子屋開業は資金が安く抑えられるメリットがある反面、大きな利益は見込めませんので、駄菓子屋で人を雇うことはほぼ論外です。
家族や友人に手伝ってもらう以外は、ひとりで店番から仕入れ、管理をすることが大前提でしょう。
2. 駄菓子屋に最適な物件の選び方
どんなビジネスを始めるときにも、誰をターゲットにするのかを決定することはとても重要になり、駄菓子屋の場合には子供と家族がキーポイントです。
駄菓子屋の場合には、同じエリアで駄菓子屋が開業している可能性は少ないですが、スーパーやコンビニエンスストアでも駄菓子は売られています。
物件選び成功の秘訣は、情報収集と分析です。
駄菓子屋のニーズが高い場所を見つけて、物件探しを始めましょう。
2-1. 2つのポイント
駄菓子屋の場合には、昔を懐かしむ大人も買い物に来るでしょうが、主なターゲットは子供です。
子供が多く集まる場所の近所で、始めることが駄菓子屋で成功する秘訣です。
気になる物件が見つかったら実際に足を運び、周辺の環境をしっかり確認しましょう。
・子供が集まる場所があること
20~30年前には、小学校の直ぐ側に駄菓子屋がありましたが、すでにお店を閉めているところが多いために、小学校周りでも駄菓子屋を見かけることはほぼありません。
これから物件を探す人にとっては開業できる候補地が多いとも言えますが、小学校の側であることが、売上に直結するわけではありません。
寄り道が禁止されていたり、集団下校があったりする場合には、下校時の子供が駄菓子屋に寄る可能性は下がります。
最近は子供が忙しくなり、下校後に習い事や塾に通うことが当たり前になっていますので、一度家に戻ってから駄菓子屋へ足を運ぶ時間がありません。
人気の学習塾や子供が集まる公園なども、駄菓子屋開業の候補地として検討してみましょう。
・家族が出かけるスポット周辺エリア
一番のターゲットは子供ですが、実は駄菓子屋は家族連れにも人気のスポットです。
そのため、最近ではショッピングモール内に出店しているケースも目立ちます。
タイプスリップしたような懐かしい駄菓子屋の空間が、大人にはとても魅力です。
子供と大人が一緒に出かける場所も、駄菓子屋開業候補地として検討してみましょう。
2-2. 契約時の注意点
店舗物件の契約には、居住用の物件を契約する時とは違った注意点がありますので、居住用の契約経験者でも店舗用の契約書をきちんと読み込むようにしましょう。
また、駄菓子屋の経営は大きな利益が見込める業種ではありませんので、毎月支払い続ける家賃の安いところを見つけて黒字経営を目指しましょう。
店舗用の物件には、普通契約と定期契約の2種類があります。
普通契約の場合には契約の更新を希望すれば、更新料がかかるもののほとんどのケースで引き続き物件の使用ができます。
ところが、定期契約であることに気が付かずに契約をしてしまった場合には、決められた期限が来ると再契約できずに、泣く泣く物件を返却することになります。
希望する物件が、どんな契約形態になっているのかをしっかり確認しましょう。
初期費用を抑えるために居抜き物件に人気が集まっていますが、居抜き物件では残された設備が使えるメリットがありますが、注意点が2つありますので事前に確認をしましょう。
まずは物件内に残っている内装や設備の所有者が、誰なのかを確かめることが必要です。
以前の持ち主が所有者になっている場合には、後から面倒なことになりかねません。
棚や椅子ひとつであっても、契約前に把握しておくことおすすめします。
2つ目は、以前の店舗が閉店した理由を聞いてみましょう。
思ったように人が入らずに、お店を閉めた場合も考えられます。
子供や家族連れでにぎわう通りに思えても、現実とは違う場合もありますので、事前リサーチをしっかりしておきましょう。
3. 駄菓子屋のような在庫ビジネスで黒字経営するコツ
『無在庫ビジネス』と呼ばれる業種があるように、経営をしていく上で在庫は宝にもなりますが、マイナス要因にもなる一筋縄ではいかない存在です。
駄菓子屋の場合には、店舗に駄菓子を並べて販売しますので、無在庫ビジネスはできません。
常に在庫を抱えているということは、在庫管理をしっかりすることが赤字を黒字に変える分かれ道です。
駄菓子のような細かい商品の在庫管理をすることは、気がすすまないと思われるかもしれまさせんが、陳列棚に穴を開けないように常に商品を仕入れ、ロスを作らないことが求められます。
人気の駄菓子やあまり売れない商品、賞味期限なども考慮しながら、在庫管理を続けていきましょう。
4. 駄菓子屋の開業に成功した事例
駄菓子屋さんにとって苦境とも言える時代に『駄菓子屋の成功』は、利益を求めないことと言い切る駄菓子屋のオーナーがいます。
駄菓子屋の成功は、大半のビジネスとは違うところにあるようです。
子供の数が減り子どもたちが忙しくなり、駄菓子の需要は決して多くはありません。
その上、駄菓子は駄菓子屋さん以外でも購入できるので、子供の多かった時代と比べると競争相手が増加しています。
需要が減り供給が増えているので、利益率の低い駄菓子屋の売上は下がります。
バブルの時には1日の売上が2~3万円ありましたが、今では5,000~1万円と言われていますので、純粋な利益は1,000~2,000円です。
駄菓子屋の成功は儲け以外の部分にあり、利益を追求するのではなく、人との交流や子どもたちの成長を見守ることの中にあると思える人が、駄菓子屋で成功する人です。
利益が求められないのなら駄菓子屋を開業する人はいなくなってしまうと心配されるかもしれませんが、新たに駄菓子屋の開業を志す人がいます。
駄菓子屋への熱い想いを持って、創意工夫をしながら『それぞれの成功』を目指しています。
5. 駄菓子屋の開業・経営方法の種類
駄菓子屋がピークを迎えていた40年ほど前は、地元のおじいちゃんおばあちゃんが自宅の一角を駄菓子屋として活用しているケースが一般的でした。
現在は駄菓子屋の数は減少しているものの、駄菓子屋の開業方法やあり方は広がりを見せています。
5-1. 駄菓子屋のフランチャイズ経営
レストランやカフェだけにとどまらず、コンビニエンスストア、介護や学習塾などさまざまな業種がフランチャイズ契約で始められ、駄菓子屋もそのひとつです。
国内店舗数が90カ所を超える駄菓子屋も、フランチャイズを募集しています。
フランチャイズでは本部から経営のノウハウや研修などが受けられることがメリットですが、加盟金やロイヤリティーなどの支払いがあります。
全国展開する駄菓子屋の加盟金は300万円、保証金が150万円、開店準備手数料が50万円かかりますので、駄菓子屋とは言え大きな金額が必要です。
また、フランチャイズ経営とは少し異なる『のれん分けシステム』で駄菓子屋の開業をサポートしている企業もあります。
すでに、実績28年を超え無料相談から、最短1週間で駄菓子屋を開業した経験があります。
加盟金やロイヤリティーはありませんが、経営と開店指導を有料でおこなっています。
5-2. 駄菓子屋の個人経営
経営が難しいと言われる駄菓子屋ですが、フランチャイズなどに頼らずに、工夫をこらした個人経営を始める人もいます。
20代の兄弟が駄菓子屋の開業をこころざし、夢を形にしています。
子供にとって大切な場所である駄菓子屋が減少していることを知り、自分たちが子供の頃に感じていた駄菓子屋に対する思いを今の子供達にも分けたいという思いから、駄菓子屋の開業に乗り出しました。
駄菓子を販売するだけではなく、もんじゃを焼けるスペースやガチャガチャコーナーなど、ワクワクする空間づくりを大切にしています。
個人経営は試行錯誤の連続になりますが、アイデアが実践しやすく工夫次第で予算が抑えられる経営が可能です。
5-3. 自宅で駄菓子屋を開業
住まいの一角に駄菓子屋を開業することが、一番始めやすく順調に経営ができる方法でしょう。
自宅のある立地条件が駄菓子屋経営に向いていて、リフォーム費用も安く抑えられるのなら、自宅で駄菓子屋を開業することを前向きに検討してみましょう。
賃貸物件を借りるよりは、リフォームに費用がかかってしまうかもしれませんが、毎月の家賃が発生しないのは、駄菓子屋経営で利益を出すためには重要なポイントです。
6. 駄菓子屋の開業に必要な資格・許可
駄菓子屋を開業するメリットに、必要な資格がないことも上げられます。
業種によっては、免許を取得するまでに半年以上かかるケースもありますので、始めやすい職種と言えます。
ただし、駄菓子を販売する以上届け出は必要ですので、管轄の税務署に行って開業届の提出をすませましょう。
駄菓子を販売するだけの場合には開業届だけで十分ですが、鉄板を置いてもんじゃ焼きを出し、寒い冬におでんを売りたいと計画している時には、飲食店営業許可や喫茶店営業許可が必要です。
飲食店営業許可と喫茶店営業許可の取得には、保健所からの認可が必要です。
自治体によって申請方法や料金が微妙に違いますが、都内の場合にはそれぞれが2万円以内で取得できます。
許可をもらうために必要な設備や基準などがありますので、早い段階で保健所へ相談に行くことをおすすめします。
行政書士に依頼もできますが、保健所から手順などのアドバイスをもらえれば、自分で手続きができます。
予算を抑えたい場合には、まずは保健所に相談に行ってみましょう。
7. まとめ
利益とは違うところに成功を求めることが、駄菓子屋を開業して成功を感じられることになるとお伝えしましたがそれだけではやはり駄菓子屋は減少する一方で、子どもたちの居場所や交流の場所は消えていくしかありません。
駄菓子屋を開業し、実際に営業を続けている人たちはもちろん利益第一主義でお店を開いているわけではありませんが、それぞれができる工夫をあふれるばかりにしています。
たとえば、もんじゃ焼きやおでんなど子供が喜ぶメニューを出したり、ゲームコーナーを設けたり、夜には大人が集まる居酒屋にシフトしたりと多くの人が集い語らう場所づくりを目指しています。
駄菓子屋経営は薄利多売の代表格とも言えますが、利益とは別次元で大きな役割や意義を果たし、結果として経営が成り立つことが可能になる夢のある職業かもしれません。