宅建業を開業するには500~1,000万円の費用がかかります。さらに60~100万円のランニングコストが必要です。自己資金を用意するのが一番ですが、資金が足りないときには金利の低い日本政策金融公庫の融資制度を利用するのがおすすめです。宅建業の開業資金や黒字経営のコツをまとめました。
アパートやマンションの売買取引や仲介業務を専門とする宅建業の開業を検討するとき、どのくらいのコストがかかるのかと不安になることもあります。予想していたよりも初期費用がかかってしまうと、その後の経営に影響がでることもあるでしょう。
今回は、宅建業に必要な開業資金と内訳について解説します。
宅建業を開業するのに必要な資金を調達する方法や黒字営業をするためのコツもまとめていますので、安心して開業をするためにも参考にしてください。
もくじ
1. 宅建業に必要な開業資金
宅建業を開業するには、初期費用とランニングコストが必要です。ランニングコストについては、経営が安定するまでに時間がかかることもあるので、開業前に数カ月分のランニングコストを用意しておきましょう。
1-1. 初期費用と内訳
宅建業の開業にかかわる初期費用は500~1,000万円です。
・会社設立費用
株式会社を設立して知事免許を取得する場合は、24.2万円の費用がかかります。行政書士や司法書士に株式会社の設立に関する依頼をした場合は、24~28万円が必要です。
・宅建業知事免許の費用
宅建業知事免許を個人で取得するときには3.3万円がかかります。行政書士に取得のサポートをお願いするときには、13万円が必要です。
・物件取得費
宅建業を開業するには事務所の取得が必要です。物件を取得をする場合、家賃のほかに2~6カ月分の保証金がかかります。15万円の物件を借りるときには、100万円の資金が必要ですので注意しましょう。
・備品代
宅建業の経営に必要な備品は、パソコン、机、いすなどです。すべての備品を新品でそろえると100万円かかることもあります。中古などでなるべく費用をおさえるようにしましょう。
・宅建保証協会加入金
アパートやマンションの取引についてのトラブルが発生した場合、債務を支払わなければならないこともあります。債務を一定の範囲で担保にするための方法として宅建保証協会への加入があるので、必ず加入しておきましょう。160~180万円の費用がかかります。
1-2. ランニングコスト
ランニングコストに関しては、会社の規模や開業する地域によって異なります。家賃10万円の事務所でスタッフを2人雇った場合のランニングコストは60~100万円ほどです。主な内訳は以下のとおりです。
・家賃
宅建業を経営するには事務所が必要です。自宅を事務所として使用すると、家賃が発生しないので経費をおさえることができます。しかし、事務所の開設には一定の条件があるので注意が必要です。
たとえば、東京都の宅地建物取引業免許申請の手引きには「一般の戸建て住宅、また、マンション等の集合住宅の一室を事務所として使用すること、同一フロアーの他の法人等と同居することや仮設の建築物を事務所とすることは、原則として認めておりません」と記載しています。自宅を事務所にするときには、問題がないか確認しておきましょう。
・人件費
一人でも開業はできますが、効率のよい経営をするには1~2人のスタッフを雇うほうがよいでしょう。20~60万の経費は必要です。
・広告宣伝費
安定した集客のためには広告宣伝がかかせません。自社のホームページを用意したり、チラシを配布したりしましょう。広告宣伝費の目安は30万円ほどです。
2. 宅建業の開業資金を調達する方法
宅建業を開業するときには資金が必要です。自己資金だけで開業をするのが一番よいのですが、資金を用意するのが難しいときには、金融機関などを利用して資金調達をしましょう。
おすすめは日本政策金融公庫です。金利が年2%と低く、返済期間も長めに設定しているので、返済のリスクを抱えることなく経営ができます。融資を受けるためには、1/10の自己資金を用意しておくこと、クレジットカードなどの滞納履歴がないことが必要です。
3. 宅建業に最適な物件の選び方
宅建業をはじめるときには物件選びにも注意しましょう。最適な物件を見つけるためには、以下の3つのポイントがあります。
3-1. 物件選びの3つのポイント
・駅から徒歩圏内がおすすめ
安定した経営をするためには集客が大切です。効率よく集客するには駅の近くにある物件を借りるのがよいでしょう。特に2路線以上が交わる駅は、利便性が高いのでおすすめです。
・商号が表示できる物件を選ぶ
宅建業の開業では、表札を出すことを義務付けています。取得をする物件について、商号を表示できるスペースがあるか確認しましょう。
・接客スペースを用意する
宅建業の開業では、接客のためのスペースを設けることも義務付けているので注意が必要です。なお、レンタルオフィスについては、共用部分に接客スペースがあれば条件をクリアできます。
3-2. 契約時の注意点
宅建業の開業に適した物件を見つけたら、賃貸契約の手続きをします。そのときに気をつけておきたいこととして、入居時期があります。
物件を借りて事務所を構えても、宅建業知事免の免許が下りないと営業ができません。場合によって家賃だけを払い続けることもあるので、物件を取得するときには資金に余裕を持たせておきましょう。
4. 宅建業で黒字経営するコツ
宅建業を黒字営業するには、ほかの業者にはない価値を作ることです。「このエリアならほかの業者に負けない」、「ワンルームのアパートならほかの業者に負けない」など、ほかの宅建業との差別化を図れば、安定した集客ができるでしょう。
5. 宅建業開業の成功事例と年収
宅建業を独立して開業した人の平均年収は700~800万円ですが、中には1,000万以上の人もいます。ある男性は、幅広い人脈を作ることで年収アップに成功しています。人脈を利用して、紹介できるアパートやマンションの情報を入手しやすくなり、結果として顧客のニーズに合ったアパートやマンションを紹介できるようになりました。それにより、契約件数が増えて高年収を稼ぐことに成功しています。
6. 失敗しない宅建業の開業・経営方法の種類
宅建業を開業するときには、フランチャイズ経営と個人の経営の2種類から選択できます。それぞれ利点があるので、開業を計画するときには、どちらの方法にするのか慎重に決定しましょう。
6-1. フランチャイズ経営
フランチャイズ経営のメリットは、ブランド力を利用できることです。宅建業の多くは小さな規模で経営しており、宣伝広告によって多くの人に会社を認知してもらうには時間がかかるというデメリットがあります。フランチャイズに加盟すれば本部のブランド力を生かして集客することが可能です。
また、本部は経営支援やデジタルマーケティングのノウハウを持っているので、安心して経営の相談ができます。
6-2. 個人経営
個人で経営する場合のメリットは、経費をおさえることができる点です。フランチャイズの宅建業に加盟をすると、加盟金やロイヤリティが発生します。経営がうまくいっていないときには、ロイヤリティが経営を圧迫することもあるでしょう。個人で経営する場合は、加盟金やロイヤリティがかからないので、少ない経費で経営ができます。
7. 宅建業の開業に必要な資格や許可
宅建業を始めるときには、以下の資格や許可が必要です。トラブルにならないためにも、なるべく早めに申請をしておきましょう。
・宅地建物取引士
宅建業を開業するときには、ひとつの会社において5人につき1人の割合で、宅地建物取引士の設置が必要です。オーナーが宅地建物取引士の資格をもっていないときには、宅地建物取引士を雇用しなければなりません。
・会社を設立する
宅建業は個人事業として運営できますが、安定した経営を目指すなら信頼の高い法人での開業がおすすめです。法人で事業をはじめるときには、登記申請手続きなどが必要です。
・宅地建物取引業免許
会社を設立したあとは、宅地建物取引業免許の申請です。都道府県知事、または国土交通大臣へ申請をします。申請してから許可が下りるまでにはかなりの時間がかかることもあるので注意しましょう。なるべく早めに申請するのがおすすめです。
8. まとめ
宅建業を開業するときには500~1,000万円の初期費用がかかります。また、毎月60~100万円のランニングコストがかかることも覚えておきましょう。開業直後は顧客の獲得が難しいので、数カ月分のランニングコストを用意しておくのがおすすめです。
宅建業のビジネスを成功させるには、ほかの業者にはない価値を作ることが重要です。コンセプトや顧客のターゲットを決めて、自社にしかない特色を出すことができれば、安定した経営を続けることができるでしょう。