接骨院で勤務を続けていくうちに、次第に独立開業をしたいと考える方は少なくありません。本格的に動き始めようと思った時にまず気になるのが開業するにあたって必要になる資金ではないでしょうか?ここでは接骨院を開業するための初期費用や物件について解説し、黒字経営について考えていきます。
接骨院での勤務をしている方の中には、自分の医院を持ちたいと考え始める方がいると思います。その時に必要となる開業資金がどれくらい必要なのか、物件や必要な準備はどのようにすれば良いのかなど多くの疑問と不安が出てくると思います。
ここでは接骨院を開業したい方に向けて、初期費用や経営のコツなどを解説していきます。
もくじ
1. 接骨院に必要な開業資金はどのくらい?
接骨院を開業するにあたって必要な開業資金は500万円~1,000万円が目安になりますが、規模や用意する機材、内装・外装へのこだわりや物件のタイプによって異なります。
1-1. 初期費用と内訳
接骨院を新規で開業する場合の初期費用の内訳は以下の通りとなります。環境によって異なるため、目安として参考にしてください。
物件取得にかかる費用 |
100万円~250万円 |
内装・外装工事費用 |
200万円~350万円 |
機材・備品費 |
200万円~300万円 |
衛生・消耗品費 |
5万円~10万円 |
宣伝・広告費 |
5万円~15万円 |
開業前光熱費 |
10万円~20万円 |
合計 |
520万円~945万円 |
物件取得や改装工事と機材・備品にかかる費用がとても大きいことが分かります。そのため、持ち家の空いている部屋を使う場合や備品を譲り受ける場合は大幅に初期費用をカットできます。
1-2. ランニングコスト
接骨院を無事に開業できても、そこから先も毎月コストがかかることになります。環境によって大きく差が出る部分ではありますが、以下の項目は毎月かかるコストとして計算しておきましょう。
・家賃
・設備維持費
・水道光熱費
・通信費
・人件費
・消耗品や衛生用品費
・宣伝広告費
・雑費
人件費は1人で経営する場合は不要です。施術に使用するタオルやベッドのシーツのクリーニングを業者に依頼する場合や、リース契約やローンの支払いがある場合はその分の費用もプラスしてください。
2. 接骨院の開業資金の調達方法
自己資金だけでは賄えない場合、開業資金は融資に頼ることになります。病院の場合は比較的融資の審査が通りやすいですが、特にオススメなのは以下の2つの機関です。
・日本政策金融公庫
融資可能額:100万円~3,000万円
振込にかかる期間:1ヶ月~2ヶ月
・銀行や信用金庫
融資可能額:50万円~5,000万円以上
振込にかかる期間:1ヶ月ほど
日本政策金融公庫はあらゆる事業の開業をサポートする団体で、融資に積極的なのがポイントです。非営利団体のため、審査が比較的緩く、接骨院であればかなりスムーズに融資が受けられる可能性があります。
土地などの担保がある場合は銀行や信用金庫の融資も受けやすく、大きな金額でも対応してくれるため、候補として考えてみても良いでしょう。
3. 接骨院に最適な物件の選び方
接骨院を賃貸物件で始める場合は貸店舗かマンションなどの一室を利用することになります。物件は開業後の運営に大きくかかわってくるため、なるべく妥協せずにより良い物件を探すようにしましょう。
3-1. 物件選びの3つのポイント
接骨院に適した物件の選び方を3つのポイントに絞って解説します。スムーズな開業と黒字経営にはとても重要になってきます。
・必要な構造設備基準であるかどうか
接骨院を開業する場合は施術所開設届の提出が必要になり、審査に通る必要があります。その時に重要なのが施術所として使う物件の構造設備基準です。自宅・賃貸物件のどちらで開業する場合にも条件を満たす必要があるため、必ずそれを考慮した物件選びをしましょう。必要とされる主な条件は以下の通りです。
・6.6㎡以上の専用の施術室があること
・3.3㎡以上の待合室があること
・施術室は1/7以上の面積に相当する部分を外気に開放できる、もしくは同等の換気装置があること
・施術室は住居・店舗と構造上独立していること(出入口が別にある等)
・施術室と待合室の区画が固定壁で上下左右を完全に仕切られていること
・ベッドが複数台ある場合はカーテンやパーテーションで区切りプライバシーを配慮すること
・機器や手指の消毒設備があること
詳しい審査基準は保健所にて確認するようにしてください。
・店舗や事務所契約がOKの物件
当たり前ですが接骨院は店舗や事務所経営が許可されている物件であることが絶対条件です。店舗を借りるのであれば問題ありませんが、マンションの一室を利用したい場合は必ず接骨院を開業する旨を伝えておきましょう。SOHOタイプの賃貸マンションであれば接骨院を一室で開業することが可能です。
・清潔で明るい空間を作りやすい物件
接骨院はリラクゼーション目的に来る方も多く、ゆったり落ち着いた空間が求められます。そのため、明るく清潔感がある印象の内装の方がリピーターが増えやすいです。デザイナーズタイプのマンションやサロンに利用されていた居抜きの店舗などは、接骨院としてとても使いやすいです。
3-2. 契約時の注意点
賃貸物件を接骨院のために借りる場合、契約時には以下の点を注意しておきましょう。
・店舗や事務所としての利用が可能であるか
・周辺環境は適しているか
・契約期間
・更新や解約の条件
・トラブル発生時の対応
いずれも重要なポイントですが、周辺環境は契約前に何度か確認した方が良いです。内見の際に良いと思っても時間帯によっては騒音があり、施術室が落ち着かない環境になることもあります。契約前に気づいていれば取りやめることが可能なため、細かくチェックしてから契約を結びましょう。
4. 接骨院で黒字経営するコツ
接骨院は開業後にオーナーであるあなた1人が施術を行う場合、あまり多くの費用がかかりません。しかし、黒字経営を維持するためには様々な工夫を続けていく必要があります。個性を出しにくい業種のため、地道に信頼を得て堅実な経営を続けていくことが大きなポイントです。
・出張での施術も視野にいれておく
・患者さん一人一人に寄り添った施術をする
・院内を清潔に保ち心地よい空間を意識する
・定期的にDMや宣伝を行う
このようなことを意識し、固定の患者さんの獲得や定期的に来たくなる空間づくりをしてみましょう。季節に合った健康維持に役立つ情報を発信したり、高齢の方に向けてお手紙を送るのも効果的です。
5. 接骨院の開業に成功した事例と年収
接骨院を開業した実際の事例とその初年度の院長の年収をご紹介します。小さめの接骨院でベッドは1台、スタッフも1人のみのコンパクトな経営です。
・収入
1日の患者数:15人
平均単価:2,140円
1ヶ月の収益:73万8,300円
・支出(月平均)
必要経費:19万4,210円
人件費:21万円
地域密着型の接骨院で比較的安定した経営が続き、収支も保つことができました。院長の年収は400万円ほどです。
6. 失敗しない接骨院の開業・経営方法の種類
接骨院は個人で開業する方が多いですが、フランチャイズでの経営方法もあります。どちらの経営方法があなたに合っているかを検討し、失敗しない開業を目指しましょう。
6-1. フランチャイズ経営
開業や経営のサポートをプロに行ってもらえるため、安定した経営を目指しやすくなります。知名度が高い看板を掲げることは開業直後の利益に直結するため、その点でもフランチャイズ経営は黒字を目指しやすくなると考えられます。
しかし、本部にロイヤリティを支払う必要があったり、研修や備品購入に費用がかかることがあります。
6-2. 個人経営
個人で経営する場合は物件や医院の名前、内装など全てのことを自分で決めることができます。サービス内容も自由に決められるため、認められれば人気がでて大きな利益を生み出せるでしょう。
しかし、腕に自信がある場合でも経営の知識がない場合は失敗してしまうリスクも高い開業方法です。
7. 接骨院の開業に必要な資格や許可
接骨院を開くには必ず必要になる資格があります。「柔道整復師」という国家資格で、これがないと接骨院を開業することはできません。
加えて、保健所で施術所開設届を出し、物件の構造が審査に通る必要があります。自宅での開業でも店舗やマンションの一室での開業でも必須な届け出と審査のため、開業前に必ず行うようにしましょう。
8. まとめ
接骨院の開業資金に関して、開業に至るまでに500万円から1,000万円程度の資金が必要となることが分かりましたね。さらにランニングコストに関しても考えなければいけないため、合計で1,500万円~2,0000万円程度の資金を用意しておく必要があると言えるでしょう。開業に至るまでの資金に関しては大きな額となってしまいますが、接骨院は多くの方が必要とする業種のため、信頼を得ることができれば安定した経営が可能です。信頼を勝ち取り、長く黒字経営を維持できるようにしていきましょう。