ブルーパブ開業では、酒税法に関わる免許申請や交付があることで、資金計画の考え方に特徴があります。免許申請時には醸造場所や資金の確保が必要です。ブルーパブ開業資金と成功のために知っておきたいことを解説していきます。
都内でも増え始めた、個性的なビールを提供するブルーパブに注目が集まっています。その店でしか味わえないビールは人気が高まっており、醸造から手がけるため、市販品とは違った新鮮な風味が魅力です。
ブルーパブ開業のノウハウには、商品開発や魅力的なサービスやマーケティングなどの他に、酒税法からくる内容が含まれています。ブルーパブ開業の資金や必要な免許について確かめていきしましょう。
もくじ
1. ブルーパブに必要な開業資金はいくら必要?その内訳は?
醸造施設の規模で金額は大きく変わり、4坪ほどの施設なら200万円くらいでできるという声もありますが、ある程度の規模を確保するなら1,000万円~2,000万円前後が必要です。どれくらいの資金が必要なのか内訳を解説していきましょう。
1-1. ブルーパブの開業資金
ブルーパブでは、お店で醸造しており、そこでしか味わえないビールが飲めるのが魅力です。
醸造施設があり、サーバーから注がれるところをみながら、フレッシュで風味豊かなビールが提供できるところが醍醐味です。
こうした商品価値の高さをアピールできる施設を準備することが必要なことと、ビールは醸造に日数がかかり、仕込んですぐに出すことができないので、運転資金に余裕が持てなければ経営が厳しくなってしまいます。
仕込んだビールが飲めるまでに3週間程度はみなければなりません。200万円程度の投資でブリュワー(醸造施設)を準備できたとしても、お客様に満足してもらえる雰囲気作り、立地、一緒に提供される料理などの質を保つためにも資金には余裕が必要です。
施設の規模、提供できるビールの生産性、リターンがどれくらい見込めるのかといった要素から開業資金の規模を見定めていきます。日本政策金融公庫、国や自治体の創業促進補助金なども検討すると良いでしょう。
1-2. 初期費用の内訳
醸造施設の導入費用
月産450リットルの設備でおよそ500万円、1,000リットルの設備で800万円ほどになります。
醸造設備のみならもっと安くなりますが、仕込みに必要な寸胴やガス設備、冷却タンク、樽などを含めると、このくらいになります。
醸造のノウハウ研修
醸造は設備さえあればすぐに誰にでもできるというものではありません。お客様を満足させることができる品質のビールを安定供給するには、技術が必要です。一から始めるのであれば、フランチャイズ加盟やコンサルタントを受けて研修を積むことになります。その費用や、商品開発費として200~300万円程度が見込まれます。
物件にかかる費用
すでに飲食店を経営しているという場合を除いて、開業店舗の確保が必要です。醸造施設を併設しての魅力ある店作りが求められるため、リフォーム、内装費用が数百万円以上かかり、建設となればさらに大きな資金が必要です。
その他設備や什器など
テーブルや椅子、食器やグラス、調理設備など細々したものを準備しなければなりません。
冷蔵庫や厨房施設などにも100万円単位の費用が見込まれます。また、法人登記する場合には法人設立費用6万円以上、保健所申請、税務署へ醸造免許申請などの費用がかかります。
行政書士などに書類の作成を依頼する可能性を考えると、申請関係だけでも30万円前後はかかるでしょう。
1-3. ランニングコストの内訳
家賃やローン返済、水道光熱費、廃棄物処理、商品開発費、材料の仕入れなどは、規模にかかわらず必要です。ビールを醸造して提供するため、酒税がかかってくることも押さえておきましょう。人を雇っている場合には、給料だけでなく社会保険料や源泉徴収などの負担を含めて予算をたてましょう。
2. ブルーパブの開業資金を調達する方法
開業資金を作る方法には、①自己資金を貯める、②金融公庫から借り入れ、③銀行など金融機関から借り入れ、④補助金などの申請、⑤クラウドファンディング…などの方法があります。ブルーパブ開業に大事なことは、酒造免許申請のときに潤沢な資金が整っていることです。いろいろな開業資金の調達方法についてみていきましょう。
①自己資金を貯める
完全な自己資金が多ければ多いほど、ローン返済や金利の負担が減ります。数百万円の範囲なら、コツコツ貯金で準備できるかもしれません。共同経営できる相手を見つけて、資金を出し合うという方法もあります。
しかし、資金が少なければできることが限られてしまいますから、計画に対して不足する分は借り入れなどを考えることになります。
②金融公庫から借り入れ
国のお金を使った金融公庫では、事業支援を行っています。事業計画の相談に乗ってもらえる場合もありますし、損益計算書などの数字から、ブルーパブ開業の資金計画が現実的なものであるか判断されます。借り入れがうまくいき、十分な資金が準備できる目途がたてば免許申請もスムーズでしょう。
③銀行など金融機関から借り入れ
民間金融機関、地域の信用金庫や農協などの金融機関からの融資を利用する方法があります。損益計算の数字がどれだけ信頼できるかが肝になりますから、現実味のある資料づくりと熱意が鍵になります。
地域貢献や地域農業の振興という点がアピールできるなら、信用金庫や農協からの融資を受けやすいでしょう。この方法でも、十分な資金が準備できる目途がたてば免許申請もスムーズでしょう。
④補助金などの申請
自治体、企業・事業家などがスポンサーとなっている補助金や助成金があります。中小企業庁委託サイト「ミラサポ」や商工会議所、金融公庫などで調べてみましょう。補助金助成金は、条件となる成果を収めることで返済せずにすむ資金です。ただし、成果を確認してからの後払いがほとんどですから、開業時の現金確保になりにくい性質のものです。
⑤クラウドファンディングなど
ネットでスポンサーを募るクラウドファンディングは、ここ数年で広がりを見せています。
提案事業に投資してもらい、お礼を返す仕組みです。より小口で多くの支持者を募ることで資金を集めるので、知名度を高める広告効果も期待できます。
運転資金や開発費に当てるなら良いですが、免許申請までに資金を確保するということであれば向いているといえません。事業の内容によっては、資産家や投資家から投資を受ける方法なら免許申請に間に合うかもしれませんが、確実に免許が取れるかわからないのですから、投資してもらうことそのものが難しいでしょう。
3. ブルーパブの物件選びのポイントと契約時の注意点
ブルーパブはビール醸造だけでなく、パブとしてビールを提供する飲食店という側面を持っています。商売に適した条件だけでなく、お酒を扱うために必要な免許申請をクリアできる条件も重要です。
人の流れが良く集客しやすい
人通りが多くお客さんの目に止まりやすければ、集客力が高いといえます。しかし、駅チカや商業区域の人気エリアは土地が高く、コストが大きくなりがちです。
ターゲットとする客層が利用しやすい場所であることがポイントなため、目の付け所を変えることで低コストながら集客力がある物件を狙うのもアリです。
雰囲気が良くビールの魅力とマッチする
ターゲットになる人が好む雰囲気にあった店舗選びが大事です。オリジナルのビールを提供するブルーパブだからこそ、「おしゃれ」、「手作り」、「個性的な魅力」といったワードにマッチする環境を確保したいものです。
許認可との兼ね合い
お酒の取扱には各種の許認可が絡んできます。お酒を扱う飲食店としては一般酒類小売業免許、醸造場所としては酒類製造免許が必要です。免許申請時には、物件契約が済んでいて場所が確保されていることが条件になります。
また、酒税法10条9号に“取締り上不適当と認められる場所に製造場を設置する場合(酒類の製造場又は販売場、酒場、料理店等と同一の場所等)”は認められないと書かれています。醸造場所には専用のスペースを設ける、お持ち帰り品の販売をしたい場合には別スペースなどの条件がクリアできる物件を選ぶ必要があります。
4. ブルーパブのような店舗ビジネスの問題点と成功のコツ
・マーケティングを生かして集客を確実にする
・技術とノウハウで固定客をつかむ
・酒税法に絡むルールを知る
商売の基本である、十分な下調べでターゲットとなる客層を取り込む集客や、技術で裏付けされた良いビールとサービスを提供することが第一ですが、酒税法が絡んでくるのが問題です。
いままでにないサービスを提供したいと考えたとき、規制があって難しいから実現していないのかもしれません。
また、免許申請時に資金力、実行場所、事業計画が整っていることが重要です。多くの開業希望者が壁と感じています。一般的な飲食店の開業と比べて独特の難しさがあるので、フランチャイズ加盟やコンサルタントの援助を受けるメリットが大きいでしょう。
5. ブルーパブ経営の成功事例と年収
どんな事業でも、独立したことで必ず年収が跳ね上がるとは限りません。売上が大きくても原価が高ければ手残りは少なくなりますし、小規模な商売でも原価を抑えて収益がほとんど代表の年収という場合には1,000万円を超えるケースもあります。
雇われているサラリーマンでは限界がありますが、独立した場合には準備と努力次第で限界を超えることができます。業界に詳しいノウハウや技術が学べるチャンスがあれば、確実性の高い事業計画を立てることができ、成功確率が高まります。
・大手から独立して月商500万円のブルーパブオーナー
・飲食店経営が夢だった醸造+居酒屋のコンセプトで成功したオーナー
・フランチャイズ加盟で独立開業したブルーパブオーナー
独立して成功するには業界の特性をよく研究すること、他にはない個性あるビールづくり、良質な味とサービスの提供が事業成功には欠かせません。また、収益計算を年単位で考えリスクに備える余裕を育てていくこと、事業に対する情熱や仕事から得ることができる幸福感が重要です。
6. 失敗しないブルーパブの開業・経営方法
クラフトビールのブームに乗って注目を集めるブルーパブ。独立開業の選択肢としてブルーパブに興味を持っているという方も多いことでしょう。しかし、華やかな成功者がいる一方で、辛酸をなめている独立開業者も存在します。失敗しないブルーパブの開業や経営方法について考えてみましょう。
・醸造免許の特性に対応できる経営体力の確保
・酒税法の理解
・ノウハウなど情報源の確保
醸造場所を確保したところで費用が発生します。商品開発しながら免許が下りるのを待つか、飲食店として営業をスタートさせて免許を待つか資金力が判断の基準になります。ビール造りの技術やノウハウとあわせて、酒税制度による特性を理解して開業・経営をすすめる必要があります。
フランチャイズ加盟やコンサルタントに相談すると、ノウハウなどの情報を効率よく集めることができます。勉強会や講演会に参加して納得のいく計画を選べる土台を作っておくことが大事です。
経営者として、業界に関わる制度や経営戦略について知識を増やすことは欠かせません。
どれだけ多くの情報を集め、それを生かして他の事業者が真似できないビジネススタイルを打ち出すことができるかが、成功の条件なのです。
7. ブルーパブを開業するために必要な資格や許可
・飲食店営業許可(保健所)
・深夜酒類提供飲食店営業開始届(警察署)
・防火対象物使用開始届(消防署)
・酒類製造免許(税務署)
・酒類販売免許(税務署)
パブとして店内で提供する場合、酒類販売免許は不要ですが、瓶ビールにして販売する場合には必要です。調理師のような、製造技術者としての資格はありません。
流れとしては、「事業計画⇒資金調達⇒施設設備工事⇒酒類製造免許申請⇒酒類製造の免許交付⇒醸造開始⇒開業」となります。新規開業の場合には、開業届や会社設立の手続きも必要です。
資金・物件契約や工事・免許申請や交付のタイミングを、段取り良く行っていくことがスムーズな開業につながります。
8. ブルーパブに必要な開業資金と成功のコツまとめ
・融資をうける場合にも酒類製造の免許申請にも事業計画が重要。
・免許申請時には資金が整っている必要がある。
・認可・免許申請の特徴を知って段取り良くすすめる。
酒類醸造の免許を取得するには、営業前に安定した事業経営ができる環境を整えなければなりません。開業資金が十分に用意できることが免許取得に直結しています。制度のことをよく知って、流れよく進めていくことがブルーパブ開業の第一歩です。