自分の知識や技術を活かすために開業を考える美容師は少なくありません。また顧客を増やすために新しい店舗を開業したいと考える方もいるでしょう。ここでは、そんな美容室・美容院の開業について、必要な資金や資格、成功する方法などを紹介しています。
美容室・美容院を開業するにあたり知っておきたいのが資金や資格です。最低どれくらい必要になるのか、目安を知り事前にしっかり準備しておくことで開業も夢ではないでしょう。またランニングコストについても学ぶ必要があります。まずは基礎知識を紹介しましょう。
もくじ
1. 美容室・美容院に必要な開業資金はいくら必要?その内訳は?
開業にあたり必要になるのが「資金」です。しかし資金が必要になるといってもどれくらいなのかいまいちピンとこない方が多いのではないでしょうか。事前にきちんと調べておくことで、開業に向けての計画が明確になります。ここでは、開業資金の相場と内訳について説明します。
1-1. 美容室・美容院の開業資金
開業資金といってもどれくらいの規模の美容室・美容院を開業するかによって変わってきます。そのため、目安としては「最低でも3ヶ月運営できる程度」は用意しておいたほうが良いでしょう。もちろん、それより上回る資金を準備できるのであればそのほうが安心です。あくまで目安ですので、きっちり準備するよりも多めのほうがスムーズに開業の計画が立てられます。開業をするうえで一番避けたいのは、「資金ショート」です。さすがに無計画のまま開業を考えている方はいないと思いますが、資金ショートになれば当然運営困難に陥ります。そうならないために、3ヶ月運営できる程度の資金はしっかり用意しておきましょう。
ちなみに、必要になる資金は主に3つ挙げられます。1つ目は、「物件取得費用」です。借りる物件の家賃によって変動するので、きちんと調べておく必要があります。2つ目は「内装工事費用」です。言葉のとおり内装にかかる費用になります。相場は、坪単価30~50万円程度。3つ目は店舗運営費用です。何も開業できれば資金がかからないわけではありません。少しでも多くお客さんが来店してくれるように、店舗運営も用意しておきましょう。また自己資金も5割ほどあると安心です。
1-2. 初期費用の内訳
先にも述べたように、ただ開業する資金だけ用意すれば良いわけではありません。それが運転資金です。ここでは開業資金について説明しているのであまり触れませんが、安定して運営できるだけの資金もしっかり用意しておく必要があるでしょう。というわけで、ここでは費目と内訳について説明します。
おおまかに必要になる資金は、「物件取得費用」「内装工事費用」「店舗運営費用」の3つ。これらについてはすでに説明しているので省略しますが、それ以外ではテナント賃料・設備費・広告宣伝費などが初期費用に含まれます。テナント賃料はいわゆる物件取得費用のことで、立地によって大きく差が出ます。費目は、保証金・礼金・仲介手数料・前賃料など。保証金は6~10ヶ月分、仲介手数料と前賃料は1ヶ月分ほどかかることになるでしょう。設備費は、新品と中古で差が出ますが、少しでも安く抑えたい場合はやはり中古のほうが節約できます。掘り出し物などを見つけることができれば中古でも十分です。広告宣伝費は、その名のとおり広告宣伝にかかる費用になります。
他にも、火災保険料・保証会社手数料・人材採用費・諸経費なども必要になるでしょう。ちなみに、もっとも費用が高いのは「内装工事費用」です。必ず相見積もりを取り、トラブルのないようにしっかり計画を立てて進めていきましょう。
1-3. ランニングコストの内訳
ランニングコストとは、ひと言でいうと企業を維持するためにかかるコストのことを言います。美容室・美容院を開業できても、ランニングコストが安定していなければ倒産する恐れがあります。特に一人で経営していく場合は、初期費用だけでなくランニングコストについてもしっかり考えておく必要があるでしょう。
まずランニングコストは冒頭でも説明したとおり企業維持のために必要になるコストです。いわゆる「毎月かかる費用」を意味します。たとえば、家賃や広告宣伝費、水道光熱費、原材料費など。お店によってかかるランニングコストはさまざまですが、これらは必ずかかってくる費用になります。一番のポイントは、「家賃」です。家賃は立地によって大きく差が出るうえに毎月支払わなければいけません。立地が良くお客さんが来店しやすいお店はとても魅力的ですが、そうなると当然家賃は高くなってしまうでしょう。もちろん維持できるのであれば問題ありませんが、必ずしもすべての人が開業で成功するわけではないため、少しでもランニングコストを抑えるにはここを工夫してみてください。
2. 美容室・美容院の開業資金を調達する方法
美容室・美容院では最低でも1,000万円以上は必要になります。しかし、これだけの費用を簡単に用意することはできません。そこで気になるのが「資金調達方法」です。お金を借りるというと銀行や消費者金融などをイメージされる方が多いと思いますが、美容室・美容院の開業では「日本政策金融公庫」や「信用金庫」などが多いと言われています。なかでも日本政策金融公庫は国の金融機関なので安心してお金を借りることができるでしょう。
日本政策金融公庫の良いところは、「新規開業資金」の最大借入額が7,200万円までということです。先にも述べたように美容室・美容院の開業には最低でも1,000万円必要になりますから、問題なく借りることができます。そのうえ小規模経営者や新規起業などのサポートもしっかりしていますから、安心です。金利も低く保証人・担保も不要なので無理なく借入できます。
他にも、補助金や助成金を利用するのもおすすめです。またある程度自己資金を用意しておくことで返済の負担も抑えることができるでしょう。
3. 美容室・美容院の物件選びのポイントと契約時の注意点
開業資金を準備できたら、今度は物件選びです。ほとんどの方が「立地条件が良い物件」を選ばれると思いますが、それだけで契約してしまうと残念ながら失敗します。また立地だけでなく水回りや電気など、全体を見て判断する必要がありますし、美容室・美容院の場合は設備容量などもチェックする必要があるでしょう。ここでは、物件選びのポイントと契約時の注意点を簡単に説明します。
まず物件選びのポイントは、「立地」です。1階・2階・3階以上・半地下などさまざまな立地がありますが、それぞれメリットは異なります。1階でも路面店の場合とそうでない場合とでは良し悪しが変わってきます。特に都心部の場合、路面店はコストが高くなりやすいので注意が必要です。半地下・2階は路面店より家賃は抑えられるものの、いかに宣伝できるかが重要になります。店舗への導線がきちんとできていれば、視界にも入りやすいので比較的安心して経営できる物件です。3階以上は集客が難しくなりやすいため、看板以外での集客も視野に入れる必要があるでしょう。
どうしても駅近やアクセスしやすいなどで選びがちですが、都心部の場合はやはりコストがかかるので大手のサロンでなければ難しいかもしれません。またきちんと現地に足を運び確認することも大切です。
契約時に注意しなければいけない点は、「工事費の支払い」「工事期間」「完成予定日」などが挙げられますが、特に居抜き物件の場合は十分な確認が必要になります。お金の件はしっかり確認しておかなければ後々トラブルになる恐れがあります。なかには看板設置ができない物件もありますので、その辺の確認も契約時にしっかりチェックしておきましょう。
4. 美容室・美容院のような店舗ビジネスの問題点と成功のコツ
開業を考えた場合、資金面は当然重要ですが、それ以外にも店舗ビジネスの問題点や成功のコツなどもきちんと学ばなければいけません。せっかく開業しても、これらがきちんと理解できていなければ失敗してしまうでしょう。ここでは、その2点について掘り下げていきます。
4-1. コストが高い
美容室・美容院の開業だけで最低でも1,000万円必要になります。また経営を維持するためのランニングコストもかかるため、きちんと準備して開業計画を立てなければ失敗してしまいます。とにかく「コストがかかる」のが店舗ビジネスです。「開業したい!」という単純な理由だけでは残念ながら成功は難しいでしょう。特に店舗ビジネスにおいて最大のデメリットは内外装や設備などの投資です。初期投資だけで非常に大きい額が消えていきますので、無駄な出費をしないためにも十分な計画が重要になるといえます。そのためには、店内のイメージやサービス、いわゆる「コンセプト」や「戦略立案」もしっかり考えておきましょう。
4-2. 社員の教育や福利厚生
一人で開業する場合は、社員の教育や福利厚生などは考える必要はありません。しかしスタッフを雇う場合、やはり社員の教育・福利厚生などをしっかり考えなければいけないでしょう。要するに、多店舗展開する場合は、社員への労力も問題になるといいます。万が一ここがきちんとできていなければ、経営は成り立ちません。ですから、社員へのマネジメントもしっかり行う必要があるでしょう。
成功するためには、とにかく優秀な社員を採用することです。お店のコンセプトなどを十分に伝え、良い点・悪い点どちらも理解してくれる社員を育成することで無理なく働くことができ、社員不正や社員不足などを防ぐことができるでしょう。また初めて開業する場合は、まず1店舗から始めてみてください。多店舗展開はそのあと視野に入れてみると良いかもしれません。
4-3. 入念な事前準備と資金調達
これは何度も説明していますが、店舗ビジネスはとにかく入念な事前準備が重要になりますし、しっかり資金調達する必要があります。店舗ビジネスの大きな問題点となっているひとつがコストの高さですから、事前準備を疎かにしてしまうと資金ショートになり兼ねないでしょう。とにかく細かいところまでしっかり計画を立て準備することが成功のコツと言えます。もちろん、運営を始めてからのことも見据えて考えます。どのようにして顧客を増やしたら良いのか、コンセプトは明確になっているか、リピーターを増やすにはどうしたら良いのか、宣伝方法などもきちんと考えておきましょう。資金調達に関しては、最低3ヶ月分は用意しておくこと。余裕をもって準備することで成功しやすくなります。
4-4. 店舗物件をしっかり選ぶ
一度物件を契約したら簡単には解約できません。立地は良いか、導線などはどうなのか、競合などさまざまな視点からしっかり調査し契約しましょう。美容室・美容院であれば、都心部と地方では同じ立地でも条件がずいぶん異なります。また都心部ほどコストもより高くなりますから、全体を見て物件を選定することが大切でしょう。どうしても人通りや広さなどを重視して選びがちですが、それだけでは失敗しやすいので要注意です。
5. 美容室・美容院経営の成功事例と年収
美容室・美容院は、美を追求する職種であるため非常に華やかで収入が高いイメージを持たれがちです。しかし実際は想像よりも年収は低く、成功例も多くないといわれています。もちろんやりがいは十分感じられますが、雇われて働いている方と開業して働いている方は違います。
まず年収ですが、一人で経営する場合と社員の人数によって変わってきます。スタッフが多いということはスムーズに対応できるのでそのぶん売上も上がりやすくなります。しかし人件費や社員教育などの労力も消費するため、大型店でない限り成功は難しいでしょう。ちなみに年収は450万円以下。そして、雇用人数に比例することになるため、たとえば3名なら350万円、20名なら1,000万円となります。
成功率は、1年で約40%。決して高い数字ではありません。もともと美容室・美容院の開業は失敗しやすいと言われていますから、成功事例が少ないのが現実です。95%は10年も持たないと言われていますので覚悟をもって開業する必要があります。逆に成功した事例でもっとも多いのが「十分なマーケティング戦略の立案ができている」ことです。またお客さんへのサービスが十分なことも大切になるでしょう。
6. 失敗しない美容室・美容院の開業・経営方法
美容室・美容院が成功した事例の多くは、「マーケティング戦略の立案がしっかりできている」ところがほとんどだと説明しました。では、開業・経営を失敗させないためには、マーケティング戦略の立案以外でどんなことに気をつけたら良いのでしょうか?
ポイントは、「新しいことをどんどん取り入れる」「勉強熱心」「無駄な支出をしない」「税金に強い」。どんなに十分な資金調達ができていても失敗する経営者が多いと言われている業界ですから、資金以外にも考えなければいけないところがたくさんあります。美容師としての仕事が好きであることは大前提ですが、やはり新しいことに柔軟に対応できる、積極的に取り組めることはとても重要になるでしょう。なかでも「税金管理がきちんとできる人」「税金の知識が豊富な人」は成功しやすいと言われています。
7. 美容室・美容院を開業するために必要な資格や許可
必要な資格は、開業する人数によって異なります。そして、当然ですが美容師としての資格は必要不可欠でしょう。いわゆる「美容師国家資格」です。この資格がないと開業することはもちろんのこと、美容師として働くことはできません。そして、2人以上で開業する場合は「管理美容師」の資格も必要になるでしょう。開業を考えてから取得するのでもOKですが、美容師としてのキャリアが3年以上必要になります。また持っておくと良い資格として「コスメコンシェルジュ」が挙げられます。フランチャイズ経営であれば美容師の資格がなくても開業できるでしょう。
一方開業において必要な許可は、「開設届」です。保健所に提出しますが、保健所から営業許可を得るために「床面積」「待合室」「床の材質」「照度」「ゴミ箱」「消毒設備」などの条件もクリアする必要があります。
8. まとめ
フランチャイズ経営であれば美容師の資格がなくても開業できることが分かりました。しかし、せっかくなら美容師としての夢を果たしてみませんか。とにかくコストが高いと言われている美容室・美容院の開業だからこそ、しっかり計画を立て、十分な資金調達をしてから挑みましょう。