「高い開業資金を準備してソフトクリーム屋を開業するのだから失敗したくない」これは誰もが思うことです。しかし、残念ながら失敗してしまう人が多いのも事実です。ここでは、失敗者にならないために、意外と知らない必要な開業資金と成功のコツ」を解説します。
飲食店の開業方法の一つに、フランチャイズチェーンシステムへの加盟があります。
フランチャイザー(親会社)のノウハウとサポートにより、業界未経験でもスムーズに開業できることから、個人法人問わず参入しやすい方法です。フランチャイズ展開する飲食店は様々ありますが、比較的小資本で開業できる、ソフトクリーム屋の開業を検討する人は多いでしょう。今回は、ソフトクリーム屋の開業にかかる費用と成功させるためのコツを解説します。
もくじ
1. ソフトクリーム屋に必要な開業資金はいくら? その内訳は?
ソフトクリーム屋はその多くが「フランチャイズ」経営です。他の業種に比べ、ソフトクリーム屋の開業資金は少なくて済むといわれていますが、実際にはどのぐらいの資金がかかるのでしょうか?
1-1. ソフトクリーム屋の開業資金
比較的小資本で開業できるソフトクリーム屋ですが、開業資金は個人経営をする場合でも、最低200万円はかかるといわれています。フランチャイズ加盟をして開業しようとする場合は、さらに加盟金や保証金、研修費などで200万円〜300万円がかかることを考えると、500万円は開業資金として準備することが必要です。また運転資金もとなると、プラス200万円ほど用意しておくのが妥当でしょう。開業資金の中でかなりのウエイトを占める加盟金等ですが、本部のノウハウとブランドを手に入れることができ、まったくゼロからのスタートをするより成功確率は高いため、フランチャイズ加盟する人が多いようです。
1-2. 初期費用の内訳
ソフトクリーム屋の初期費用額は、出店規模や出店場所、営業スタイルによって異なりますが、一般的にかかるであろう初期費用の内訳について説明していきます。
設備等
冷凍庫とソフトクリーム製造機械、この2つはいわゆる商売道具ですので、これが揃っていれば最低限のソフトクリーム屋は開業できます。さらに、店舗の大きさや、どのような形態で運営していくかによって、この2つ以外にも空調設備、厨房設備、什器備品、レジスターなどの設備が必要です。
店舗賃借料
店舗を借りる際にかかるコストです。営業する場所、規模によって変わります。また契約内容によっては敷金・礼金・保証金、前家賃など、家賃の何ヶ月分もかかることがあります。
内装・外装工事費
店舗を借りてもそのまま使用する人はあまりいません。ある程度の改装費を準備する必要があります。場合によっては、看板設置工事や外装工事が必要になることもあります。
フランチャイズ費用
オリジナルブランドのソフトクリーム屋を開業する場合にはかからない費用ですが、フランチャイズで開業する場合は初期費用に計上しておく必要があります。主に加盟料、保証金、研修費、システム導入費などが必要です。フランチャイズによってかかる費用が異なりますので、開業前には費用詳細を確認しておきましょう。
その他
移動販売型で経営する場合は車両費がかかります。また、従業員を雇って経営する場合は人件費のほか、募集費やユニフォーム代がかかることも忘れてはいけません。物件を借りる必要がない場合や個人開業をする場合は、かなりコストを抑えられると思いますが、一般的には新たに店舗を借りたり、こだわった内装・外装工事を入れることがほとんどです。初期費用に1,500万円以上かけるフランチャイジーもいますので、どこまで初期費用をかけるべきか明言はできませんが、初期費用としてかかる項目を把握して、「何にいくらかけるか」を計画する必要があります。
1-3. ランニングコストの内訳
経営ですので、日々のコストも念頭に置いておく必要があります。ランニングコストは光熱費、材料費、店舗家賃、機械メンテナンス費用、雑費が挙げられます。従業員を雇えば人件費、車両販売であれば燃料費と車両維持費がかかります。これも販売形態や導入機械によって変動しますので、ある程度はいくらぐらいかかるかを想定して運転資金を準備しておかなければならないでしょう。加えて、フランチャイズの場合ロイヤリティや負担金が発生します。フランチャイズ契約時に、売上金の何%がロイヤリティでかかるかを確認しない人はいないと思いますが、これら全てが開業後にかかる「ランニングコスト」だということを把握しておきましょう。
2. ソフトクリーム屋の開業資金を調達する方法
開業に際し、ある程度の資金を準備しなければならないことを説明してきました。また、開業後にかかるランニングコストも、ある程度用意しておいたほうが安全に経営が行えます。「ソフトクリーム屋を開業したいけど、そんなにお金が準備できない」という人は、その資金をどのように調達すればいいのでしょうか?
ソフトクリーム屋は飲食店ですので、開業資金は事業資金と捉えられます。銀行や信用金庫など、金融機関には開業資金を準備できない起業家向けの「事業資金融資制度」があり、多くの起業家がこの制度を利用して開業資金を調達しています。この制度を利用するためには、開業に向けた事業計画書と、店舗賃貸や内装工事等の費用見積書等を揃えて審査を受ける必要があります。金融機関によっては、自己資金ゼロでも融資を行うこともありますが、多くの金融機関は自己資金の額に応じて融資額が変わってきます。比較的高額な融資を望む場合は、自己資金を多めに用意しておくとよいでしょう。
開業資金に占める自己資本割合が3分の1から2分の1あれば、融資を受けられる確率が上がります。この事業資金融資制度を利用しない、もしくは、審査が通らなかった時は親戚や知人から借りる方法を考えましょう。親戚といえども他人ですし、ましてや知人からお金を借りることは気が引ける、という人もいるとは思いますがお金が足りないだけで開業する熱意はある」といった場合は、素直な気持ちでお願いしてみてはいかがでしょうか。
3. ソフトクリーム屋の物件選びのポイントと契約時の注意点
開業資金の内訳の中で挙げた店舗賃貸料。当然ですが、開業する場所を確保する必要があるため、いざ開業となった場合は物件探しも同時にしていかなければなりません。
材料原価が安く賞味期限もない為、利益率がいいといわれるソフトクリーム屋であっても、物件選びを間違えると利益をあげるのに時間がかかり、最悪の場合、早期撤退もありうる話です。
物件選びに大切なのは「どのようなスタイル・ビジョンで店を出すか」。ソフトクリーム屋の場合、テイクアウト専門店なら狭いスペースでも開業できますし、イートイン形式にしたいのであればそれなりのスペースが必要になります。
また、開業するのが都心部なのか、郊外なのか、客層のターゲットをどうするのかなどによって物件選びは変わります。開業する店のスタイルやビジョン、コンセプトによって物件選びを進めなければなりません。
また、住宅の賃貸契約とは異なり、契約の際に思わぬ費用と契約条件が課されることが多いので注意が必要です。
店舗物件の場合、敷金や礼金の他に保証金が課されることがほとんどです。契約時には、家賃10ヶ月分相当の契約金を払わなければならないこともよくあります。
他にも、造作費用の負担割合、退去時の違約金、明け渡し方法等が指定されている場合がありますので、しっかりと不動産会社と話し合い、確認の上、契約調印をしなければなりません。
4. ソフトクリーム屋のよう飲食店ビジネスの問題点と成功のコツ
飲食業界は生き残るのが厳しく、10年後に事業を継続している確率は約10%程度と言われています。飲食店ビジネスがこのような状況にあるのは、初期投資費用がかかることやライバル店が多いこと、そもそもの商品単価が低いことなどが挙げられます。
その点、ソフトクリーム屋は初期投資費用が低く、店舗の規模も比較的小さくて済むことから、様々な業種からの参入が見られますが、それでも、この飲食業界の流れに逆らうことはできません。その上、ソフトクリームは季節商品ですので、夏場に比べて冬場の売り上げは3分の1まで落ちてしまいます。
この現状を踏まえ、ソフトクリーム屋を成功させるためのコツをいくつか挙げてみましょう。
4-1. スタッフ育成
飲食店経営の要はスタッフの育成です。美味しい商品を手頃な価格で提供しても、接客が悪ければお客様は離れていきます。流動客の多い飲食店は、いかに固定客を確保するかが成功の鍵となります。「スタッフの接客マナーが良ければリピーターは増える」ということを忘れはいけません。
4-2. サービス・メニューの充実
ソフトクリームはスーパーやコンビニエンスストアでも安価で質の高い商品が購入できます。厳しいことを言えば、敢えてソフトクリーム屋で買う必要はないのです。それでも来店し買ってもらうためには、付加価値が必要です。
豊富なメニューバリエーション、原料にこだわった健康志向メニュー、冬季限定メニューの開発、サイドメニューの充実など、ターゲットとする客層に向けたオリジナルサービス・メニューの充実を図ることが大切です。
4-3. 適正価格
商品の値段設定を間違えると、お客様は来ません。利益だけに走るのではなく、競合他社の価格調査や仕入原価の見直し等の経営努力を行い、市場の「適正価格」で販売することをしていきましょう。
5. ソフトクリーム屋経営の成功事例と年収
ソフトクリーム屋経営に成功している人に共通しているのが、先に述べた「成功のコツ」を押さえながら、オリジナルの「工夫」と、客観的で根拠のある徹底した「市場調査」をしていることです。ただソフトクリームだけを売っているだけでは成功はしません。
キャッチーなメニューネームにしたり、「インスタ映え」を重視したり、出店地域の特性を生かしたオリジナルメニューを開発したりと、集客や固定客確保のための独自の「工夫」に労力を費やしています。
また、競合他社の情報のみならず、立地条件の特性を考慮したマーケティング、流行調査、他業種のおもてなし方法など、徹底した情報収集、市場調査を行い、経営に厚みを持たせています。
こういった工夫と市場調査を行なっている店は当然売上も上がります。ソフトクリーム屋の売上高は「客数×客単価」で決まりますので、客数が増え、客単価も上がればオーナーとしての年収も上がるわけです。
ソフトクリーム屋の原価率は30%前後、人件費等の諸経費は約55%としても15%の利益は残ります。1個200円のソフトクリームから得られる利益は30円、ドリンクなどのサイドメニューを提供すれば、さらに利益は出ます。
1日に何人、1週間に何人、1ヶ月で……としっかりとした集客戦略を立てることが店の成功につながるのです。
6. 失敗しないソフトクリーム屋の開業・経営方法
ソフトクリーム屋を開業する方法は主に「フランチャイズ経営」「個人経営」の2つになります。
フランチャイズ経営
この経営方法はゼロから始める人には失敗が少ない方法でしょう。
フランチャイザーの持つノウハウを活かし、経営を進められることは大きなメリットです。
メニューレシピは用意されている上、ブランド力によって集客が望めます。
もちろん加盟金やロイヤリティはかかりますが、フランチャイズの持つネームバリューを利用した安心感と集客で安定した経営が保てる可能性が高い方法です。
個人経営
オリジナル商品で勝負したい、フランチャイズにはないコンセプトで経営をしたい人には、個人経営という方法もあります。フランチャイズと異なり、全て最初から自分で始めなければなりませんので、結構な手間がかかりますが、成功した時の利益は大きなものとなります。
この方法は、すでに経営ノウハウやブランド構築に携わったことのある業界経験者には、逆に成功の可能性を秘めている経営方法かもしれません。
7. ソフトクリーム屋を開業するために必要な資格や許可
ソフトクリーム屋は飲食店ですので、飲食店開業に関する資格や許可が必要となります。飲食店の営業をするにあたり、必要な資格と許可は「飲食店営業許可」と「食品衛生責任者」になります。「飲食店営業許可」は飲食店を
営業するために必要な資格です。店舗が所在する管轄保健所に所定の許可申請書類を提出し、保健所担当者による現地調査の上、許可がおります。
また、飲食店には必ず1名以上の「食品衛生責任者」を置かなければなりません。
調理師免許や栄養士免許がない場合は、管轄保健所の講習会を受講してこの資格を取得する必要があります。この他、販売方法によって必要な資格と許可があります。
移動販売方法で営業する場合は「食品移動自動車(販売業)」や「食品営業自動車(調理営業)」の許可、深夜(午前0時〜日の出まで)に酒類を提供するような場合は「深夜酒類提供飲食店営業許可」の申請を公安委員会に行い、許可を得なければなりません。
ソフトクリーム屋に限定したことではないのですが、開業の際、個人の場合は「開業届」(個人事業主)を
管轄税務署に提出したり、法人の場合は「健康保険・厚生年金手続き」を社会保険事務所、「雇用保険関連手続き」をハローワーク、「労働災害保険手続き」を労働基準監督署で行う必要があります。
8. まとめ
ここまで、ソフトクリーム屋の開業にかかる費用と成功させるためのコツを解説してきました。
開業にかかる費用、店を経営していくランニングコストはソフトクリーム屋経営に限ったことではありません。ここで挙げたコストの内訳は、開業を検討する際に「何にいくら必要か」の基準項目として覚えておくといいでしょう。
また開業時には、開業資金の捻出方法、物件選びや契約の注意点など、実際に開業を意識した人にしかわからない苦労もたくさんあります。開業は1人でできるものではないので、信頼のおける知人や専門家のアドバイスを得ることも大切です。
フランチャイズ加盟で開業をするとなれば、フランチャイザーの意見や情報、仕組みを理解することも必要になってくるでしょう。
いずれにしても、ソフトクリーム屋経営を成功させるためには、情報収集・創意工夫、そして何よりもオーナーとして明確なスタイルとビジョンを持つことが必要ということを忘れないようにしましょう。