メディアでもたくさん取り上げられる立ち飲み屋は、今ではすっかり定着し多くの人に利用されています。そんな立ち飲み屋を開業したい!と思った時、開業資金はいくらくらい用意すればよいのでしょうか?また、立ち飲み屋を黒字経営するためにはどんなコツがあるのについて詳しくご説明します。
立ち飲み屋は、立ってのむ居酒屋というイメージがありますが、気軽に立ち寄れることから幅広い年齢層から支持されています。
立ち飲み屋を開業しようとしている人にとって、開業資金をどれくらい準備すればいいのかなど、立ち飲み屋開業準備までの説明を含めてご紹介して行きます。
もくじ
1. 立ち飲み屋に必要な開業資金
立ち飲み屋は、全国的にも認知され始めている傾向にあります。テレビや雑誌の「私のお気に入りのお店特集」などでも、立ち飲み屋が取り上げられることもあり、芸能界でも人気が広がっていることがわかります。
立ち飲み屋はその名の通り「立ったままお酒が飲める飲食店」ですが、そのスタイルは店舗ごとに違います。
そもそも「立ち飲み屋」とは、酒屋で酒とつまみを買って、店の隅で立ったまま飲食していたスタイルが元型となっています。立ち飲み屋の歴史は古く、江戸時代から一般的に見受けられていたスタイルです。
太平洋戦争の頃は、酒が配給制になったこで立ち飲み屋は一時姿を消しました。しかし、戦後の闇市で再び立ち飲み屋が復活、その後訪れた高度成長期には、安い酒を飲む人が減少したため再び立ち飲み屋が姿を消すなど、流行っては消えてゆくという流れを繰り返していました。
そして現代においては、長い不況の波に煽られて不景気が続く中、サラリーマンのストレス解消を目的に「低価格でお酒が飲める店」として大手外食企業が、立ち飲みスタイルの居酒屋、いわゆる「立ち飲み屋」を経営するようになりました。
最近では、立ち飲み屋業界に小規模飲食店がこぞって参入しており、長く続く不況の中でも、安価で安定したお酒を飲むことができる立ち飲み屋は、年々増加傾向にあります。
それでは、立ち飲み屋の開業資金についての内訳を見ていきましょう。
1-1. 初期費用と内訳
立ち飲み屋を開業する際は、以下のような名目の費用が必要になります。
・店舗用の物件取得費用
・不動産屋への仲介手数料と前家賃
・内装工事、外装工事などの設備工事費用
・什器・備品・機材・消耗品費用・求人募集費用
・初期運転資金
・広告宣伝費
・食品・ドリンク類の仕入れ費用
・人件費(スタッフを雇う場合)
立ち飲み屋を開業するにあたって、まず店舗物件を探すことになります。店舗物件を契約する場合、自分で部屋を借りるときとは違い、約半年~10ヵ月の保証金や敷金がかかる場合があります。つまり店舗として使用する物件を借りる時は、個人が部屋を借りる時の何倍にも値する金額の保証金や敷金が必要になります。
例えば、家賃25万円の物件を借りる場合に、10か月分の家賃を保証金として支払うという契約ならば、保証金は250万円となります。250万円に仲介手数料、前家賃として25万円が加算されることになるので、かなりの金額が物件取得費用として必要になります。
物件の賃貸料は、エリアによって違ってきますので、きちんと情報収集をして資金計画を元に店舗の賃貸契約を考えていくことが大事です。
次に立ち飲み屋の雰囲気や店のコンセプトに調和した外装・内装工事をするための費用です。店舗の改装工事をする場合、建築家の設計費用に加えて、内装工事や外装工事、電気・ガス・上下水道の工事、空調設備に関する工事費、店舗の看板設置費、インターネット回線などの工事費が必要になります。
物件を探すときも、スケルトン物件という室内が壁と柱の骨組みだけで貸し出される物件であれば、改装工事費が1坪当たり50万円前後とされています。物件を安く取得しようとするのであれば、居抜き物件がおすすめです。居抜き物件とは、前に使っていた人が転居の際に水回りなどの厨房設備やカウンターをそのまま残して出ていった物件のことです。居抜き物件が見つかれば、最初の内装関係の工事費用は大幅にカットできます。
さらに実際に立ち飲み屋を経営して行くことになったら、酒類やドリンク類を仕入れることになります。仕入れは店舗運営にとって、非常に大きなポイントです。どこの業者から酒類を仕入れるのかと言うことは、安易に決められることではないです。必ず複数の酒屋から見積もりを取っておきましょう。
親切な酒屋の場合、ジョッキやタンブラー、とっくり、サーバーなどを貸し出ししてくれる酒屋もありますし、商品の協賛にも協力してくれる場合もあります。
立ち飲み屋ですので、「レトロな雰囲気もインテリアにマッチして楽しめる」と言う場合は、飲料メーカーの名前やロゴが入ったグラスやジョッキもインテリアに馴染むでしょうから、備品のコストカットが可能です。
立ち飲み屋を経営するにあたっては、初期運転費用も必要になります。店舗の家賃や光熱費、食材や酒類の仕入れ代金、広告宣伝費、従業員がいればその給料も支払うことになります。立ち飲み屋を開業したいと思うのであれば、開業後に毎月どのくらいの費用がかかるのかを計算して、3ヶ月から6カ月分の維持費を初期運転資金として準備しておくと良いでしょう。
1-2. ランニングコスト
立ち飲み屋を開業した場合、毎月のランニングコストはどのようになるのかを詳しく説明します。
・店舗家賃
・人件費(スタッフを雇う場合)
・電気・水道・ガス・通信費
・食材・酒類・ドリンクなどの仕入れに関する費用
・消耗品費用
・広告宣伝費
・雑費(上記のどれにも該当しない費用)
・その他、ビアサーバーなど備品類をレンタルする場合は、レンタル費用が発生します。
立ち飲み屋を開業するにあたって、上記の項目の合計金額がランニングコストとして発生します。ランニングコストよりも店舗の売り上げが上回れば、黒字経営をすることが可能です。
そのため、まずはランニングコストを計算して、その金額を上回ることを目標に売上目標計画を立てていきます。
2. 立ち飲み屋の開業資金の調達方法
立ち飲み屋を開業するにあたり、開業資金は、自己資金の場合と、開業資金を借り入れる場合があります。
自己資金で開業資金を準備できるのが理想ですが、開業資金は金融機関や国庫からの借り入れをする人や、親族からの借り入れをする人が多いです。民間の金融機関は個人事業主が新規で借り入れすることになると、信用がないため難航する場合もあります。
しかし、日本政策金融公庫といった政府系の金融機関であれば、企業の育成目的でのサポートとして、新規開業資金(新企業育成貸付)といった融資をしてくれる場合もあります。金融機関で資金調達する場合は、複数の金融機関に尋ねてみましょう。
開業資金の調達は50%
開業資金を金融機関や親族から借り入れする場合は、自己資金の分として50%は開業資金を準備しておくことをおすすめします。
地方自治体が提供している助成金システムなども利用出来ると足しになります。助成金は募集時期もありますので、詳細は市区町村役場で尋ねてみましょう。
3. 立ち飲み屋に最適な物件の選び方
立ち飲み屋の開業にあたっては、物件選びが重要になります。
3-1. 3つのポイント
立ち飲み屋の物件探しにおいて重要な3つのポイントとして、お店のコンセプトを決めること、インスタ映えする店舗を目指すことなどがあります。物件探しのポイントを詳しく説明していきます。
・お店のコンセプトをはっきりさせる
立ち飲み屋経営にあたって、お店のコンセプトを今一度確認しておきましょう。
例えば、ワインバーをしたい場合などは、海外のワインバーをお手本にしますよね。そうなると、路面店だと集客はしやすいでしょうが、ちょっと隠れ家的なお店を目指すのであれば、大通りに面していない方がいいということもあります。
このように、お店のコンセプトから、店舗のエリアを決めることもあります。
・インスタ映えする店舗づくりを目指す
今の若い女性は、インスタ映えする店舗を探し求めています。多少立地条件は悪くても、インスタ映えするような内装のお店であれば、遠くからでもお客さんは来てくれます。外装、内装工事にはこだわりを持っておくのも、物件探しにおいて成功する秘訣です。
・居抜き物件を利用する
物件取得費を大幅に節約できる居抜き物件は、不動産サイトに載っていない物件も多数あります。まずは不動産屋へ出向いて、居抜き物件がないかどうかをチェックしてみるとよいでしょう。居抜き物件との出会いは、人との出会いにも良く似ています。人からの口コミで居抜き物件に出会うこともありますので、いろいろな人に「居抜き物件を探している」と伝えておくことも大切です。
3-2. 契約時の注意点
物件の契約時には、多額の保証金を支払う必要があります。前述でもあった通り、保証金や敷金の相場は家賃の半年分〜10か月分と高額になります。開業資金の中でもかなり高額になりますので、確実に用意できることが開業の条件ともいえるでしょう。
4. 立ち飲み屋のような飲食店ビジネスで黒字経営するコツ
立ち飲み屋を開業する際は、ほかの飲食店に比べると開業資金が圧倒的に少なくてすむことと、スタッフを大人数雇わなくても済むと言うことで、開業資金を節約することが可能です。
しかし、開業のハードルが低いということは、ライバル店舗も多数存在しており、競合店舗との戦いは苦しい時もあります。似たような店舗になると、どうしても価格で決められてしまいますので、他の店舗から抜き出るためには、オリジナル要素を加えて差別化を図ることが重要です。
「その店独自のメニュー」や「その店独自のこだわりの食材」と銘打ってお酒と一緒に提供すると言うことが、他店との差別化には最適でしょう。その他、定期的にノベルティをつけるなど、「その店にしかないサービス」で売っていくこともおすすめです。
5. 立ち飲み屋経営の開業に成功した事例と年収
・小さな店舗でも黒字経営出来る(Aさん)
立ち飲み屋を開業したくて、14坪の店舗を借りて開業しました。店舗のイメージは、スペインの小さなバル(バー)。このコンセプトだけは頑張って貫き通しました。
客層は中高年層ではなく、若者や女性をターゲットとして、スペインのバル方式になぞらえてワインバーのようなスタイルにしました。ワインバーにすることで、料理はイタリアンメニューで統一しているのですが、これもよかったようで、若い女性の人たちから愛されるお店になりました。
まだバルが少なかった頃でも、海外旅行に行ってバルに行ったことがある人たちは、みんな「またバルに行ってみたい」と思うようです。思いきって、バルスタイルにしてよかったです。おかげでひとり飲みの女性のお客さんも増えてきました。お店のコンセプトを、最初からバルスタイルにするということで貫いたのも、成功した理由だと思います。
現在の収入としては、月収50万円、年収600万といったところです。しかし流行っている立ち飲み屋では、月商400〜500万行く立ち飲み屋もあるようで、好景気だと言われながらもまだまだ続く不況の中で安い酒を求める人も増えていると実感しています。
6. 失敗しない立ち飲み屋の開業・経営方法の種類
立ち飲み屋を開業して店主になる方法としては、以下の2つの方法があります。
・フランチャイズ加盟しての独立
・完全個人経営
この2つの方法について詳しく見ていきましょう。
6-1. フランチャイズ経営
立ち飲み屋のフランチャイズと言えば、立ち飲み居酒屋の「ドラム缶」ですよね。ドラム缶を運営している「ドラムカンパニー」のフランチャイズに加盟して、立ち飲み居酒屋のオーナーになることも独立の方法です。
フランチャイズ加盟するメリットとしては以下のような事があります。
・フランチャイズ本部での研修が受けられる
・調理〜接客面での指導を受けられる
・仕入れ面でのサポートが受けられる
・ネームバリューがあるので、集客しやすい
・困った時に相談出来る
フランチャイズに加盟したら、メリットは大きいですが、フランチャイズ加盟料を支払うことになります。
6-2. 個人経営
個人で立ち飲み店を開業して店主になるという夢を持っている人も多いでしょう。個人経営であれば物件選びや店舗のイメージも自由にできます。仕入れ先は知り合いなどがいたら自由に選ぶ事ができますし、研修などに縛られることはありません。個人経営の場合、経営の全てを自分で責任を持ってしなければならないと言う事がありますが、フランチャイズ加盟料金を支払う必要もなく自由に経営出来ると言うメリットがあります。
7. 立ち飲み屋の開業に必要な資格や許可
立ち飲み屋を開業するためには、必要な資格や許可などがあります。下記の表で確認して見ましょう。
資格や申請事項 |
届出をする場所 |
詳細 |
食品営業許可申請 |
保健所 |
・開業10日〜2週間前までに保健所に届出をすること。多くの場合、保健所の現場検証(水道やトイレなどのチェック)あり。 |
食品衛生責任者 |
講習受講後、郵送で書類を受け取る、または管轄の自治体に届出して書類をもらう |
要請講習は都道府県などの自治体や保健所、各市町村役場が主催している。講習会の倍率は非常に高く、募集が始まったらすぐに申し込みをしないと受講出来ないことも多い。 毎月講習会がある都道府県もあるが、地域によっては、年に3回しか講習会がないこともあるので注意。 |
防火管理者選任届 |
消防署 |
店舗の収容出来るキャパシティが30人以上を超える物件の場合、消防署への届け出が必要になる |
上記に加えて、深夜営業の立ち飲み屋を開業する場合は、警察署に深夜酒類提供飲食店営業開始届を提出する必要があります。午前0時以降も酒類を提供する立ち飲み屋を開業するのであれば、必ず届出を出しましょう。違反した場合は、風俗営業法違反で摘発を受けてしまうこともあり、営業停止処分を受けることもあります。
8. まとめ
立ち飲み屋を開業するにあたっての開業資金についてご紹介しました。安価でお酒が飲める立ち飲み屋は、幅広い年齢層からの支持が厚く、多くの店舗が連日賑わっています。
立ち飲み屋は、ほかの飲食業と比べると開業資金が比較的安価で済むことから、開業しやすい分野ではあります。しかし、その分ライバル店舗も多いため、オリジナリティ溢れる店舗作りが成功の鍵になるといえるでしょう。