FC法はフランチャイズを規制するための法律です。日本にはフランチャイズを義務づける法律はありませんが、事業を規制する法律は存在します。独占禁止法と中小小売商業振興法の2つの法律を中心に、フランチャイズ本部の行動をわかりやすくまとめています。
日本には、フランチャイズに制限を設けるFC法があります。FC法とは何でしょうか?またフランチャイズの本部や加盟店のオーナーにはどのような影響があるのでしょうか?
FC法にかかわる「独占禁止法」と「中小小売商業振興法」を中心に、フランチャイズ経営に関する法律をわかりやすく説明します。
もくじ
1. フランチャイズを規制するFC法とは?
フランチャイズは、19世紀の半ばにアメリカ合衆国で誕生した事業システムです。日本をはじめアジアやヨーロッパなどの多くの国で、フランチャイズのシステムを用いた経営が行われています。
本部だけでなく加盟するオーナーにもメリットのあるフランチャイズシステムですが、普及と同時に問題やトラブルも増えてきました。フランチャイズシステムでは本部が優位に立ちやすいため、店舗が販売する商品や使用する材料などに制限をかけたり、商品を無理やり仕入れさせたりするという問題も起きました。そこでアメリカをはじめ、フランチャイズのシステムが普及している多くの国では、フランチャイズの経営を規制する法律を制定しています。
日本にはフランチャイズを直接に定義づける法律はありません。「フランチャイズ」という言葉を使用した法律も存在していない状況です。ただし、フランチャイズのようなシステムを用いた事業を規制する法律はあります。主な法律として「独占禁止法」と「中小小売商業振興法」の2つです。この2つの法律の内容を把握しておけば、開業後のトラブルを避けることができるでしょう。
2. 独占禁止法
2-1. 独占禁止法とは?
独占禁止法には「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」という正式名称があります。1947年に制定した法律で、商取引になどのビジネスにおいて自由や公正を促し、ビジネスにかかわるすべての事業者が、独自の判断で自由な活動を可能にすることを目的としています。
例えば、テレビを製造するメーカーが集まって、すべてのテレビの販売価格を20万円に固定するという取り決めがなされた場合、メーカー間での価格の争いが起きません。独占禁止法では、購入者に利益をもたらさない行いを禁止しています。
以下のものについては独占禁止法で規制しています。
・企業結合の規制
・私的独占の禁止
・独占的状態の規制
・不当な取引制限(カルテル)の禁止
・事業者団体の規制
・不公正な取引方法の禁止
・下請法に基づく規制
このうち独占禁止法の主要項目となるのは、「私的独占の禁止」、「不当な取引制限の禁止」、「不公正な取引方法の禁止」です。
私的独占の禁止
私的独占の禁止とは、事業者が他の事業者と組んで、不当な低価格での販売をすることによって、新規参入者などの他の事業者を排除することです。この規制は独占禁止法第3条に記載しています。
不当な取引制限の禁止
不当な取引制限の禁止とは、いくつかのメーカーが連絡を取り合って自主的に決めなくてはならない商品やサービスなどの価格に関して、共同で決定することです。また、国や地方自治体が行う入札に対して、複数の事業所が事前に話し合って入札する事業所や入札価格を決定することも不当な取引制限に該当します。この規制については独占禁止法第3条の項目で確認が可能です。
不公正な取引方法の禁止
不公正な取引方法の禁止は、独占禁止法第18条に記載しています。不公正な取引には、排他条件付取引、取引拒絶、再販売価格維持行為、拘束条件付取引、不当廉売やぎまん的顧客誘引などがあります。こうした行為は「自由で公平なビジネスを脅かす可能性がある」、「公正な手段を用いていない」といった理由があるので禁止です。
独占禁止法に違反すると、民事処分や行政処分があります。また、ケースによっては刑事処分を個人として受ける可能性もあるので注意しましょう。刑事処分の罰則は違反したケースによっても異なりますが、法人については「5億円以下の罰金」、個人については「5年以下の懲役、または500万円以下の罰金」です。
2-2. 独占禁止法におけるフランチャイズの規制
フランチャイズは本部が加盟したオーナーを指導するシステムで、通常の契約と比べた場合、強い契約関係が発生します。そのため、フランチャイズによっては以下のトラブルが起きることもありました。
ぎまん的顧客誘引
フランチャイズが加盟するオーナーを募集する際に、虚偽の収支プランを掲載したり、ロイヤリティの価格を低く設定したりしました。こうした行動は独占禁止法に抵触します。
優越的地位の濫用
フランチャイズでは、商品や材料などを本部から購入するのが一般的ですが、不利益が発生するような制限をかけたり、返品ができないのに大量購入を強制したりする行動は禁止しています。さらに見切り品の販売についての制限も独占禁止法の違反です。
3. 中小小売商業振興法
3-1. 中小小売商業振興法とは?
中小小売商業振興法とは、商店街の整備や店舗の集団化による整備などを通して、中小小売商業者の経営方法をより現実に即したものにすることを目的としています。この法律はフランチャイズだけにあてはまるものではありませんが、フランチャイズのような本部が加盟金や保証金を集めるような事業を適正化するのがねらいです。
中小小売商業振興法ではフランチャイズのような経営システムに関して「特定連鎖化事業」と定義しています。さらに、この法律は1973年に成立しましたが、2002年に改正が行われました。
3-2. 中小小売商業振興法におけるフランチャイズの規制
中小小売商業振興法では、フランチャイズ本部は加盟店に対して「法定開示書面」を提示するように義務づけています。法廷開示書面には以下の内容を記載しなくてはなりません。
・経営の方針に関する指示
・商号や商標の表示
・契約期間における更新や解除に関する指示
・加盟する際に支払う加盟金や保証金などの金額
・販売する商品の条件
・経済産業省令で定めた事項
2002年に改正した「中小小売商業振興法施行規則」では、必要となる法廷開示書面を追加し、本部の3年度分の貸借対象表や損益計算書、過去5年のフランチャイズ契約に関した訴訟件数、店舗の内装などに関する特別な指示の内容なども必要になりました。
中小小売商業振興法で注意すべき点は、書面の開示はすべてのフランチャイズに義務づけているのではなく、飲食業と小売業に限定していることです。そのため、サービス業などについては開示の必要はありません。
ただし、良質なフランチャイズの場合は、業種に関係なく本部の持つすべてのデータを提供するでしょう。加盟を申請したときに情報の開示を拒否する業者は、悪質なフランチャイズである可能性があるので注意しましょう。
4. 日本フランチャイズ協会の倫理綱領もチェック
全国にあるフランチャイズを束ねる団体のひとつに「日本フランチャイズ協会」があります。40年以上の歴史を持つ団体で、フランチャイズ事業の育成や発展を目的に設立しました。
日本フランチャイズ協会では、健全なフランチャイズシステムを普及させるため「JFA倫理綱領」を作りました。そこには、「正確かつ十分な情報提供」や「契約内容の理解と合意」、「関係法規・法令等の遵守」などを記載しています。フランチャイズへの加盟を検討する際には、JFA倫理綱領に記載している事項を守っているのかチェックしましょう。信頼できるフランチャイズを見つければ、安心した経営を行うことができるでしょう。
5. まとめ
フランチャイズへの加盟を考えるときには法律による規制のチェックが大切です。フランチャイズの事業にかかわるFC法には、「独占禁止法」と「中小小売商業振興法」があります。法律の内容をよく理解しておくことで安心して開業ができるでしょう。
日本には、フランチャイズシステムの健全化を目的とした「日本フランチャイズ協会」があります。協会のホームページでは倫理綱領も載せているため、内容をよく確認しましょう。そして、トラブルを防ぐために、倫理綱領を守っているフランチャイズ業者を選ぶようにしましょう。