国内のワイン愛好家が増え、ワインショップ開業に興味を持つ人も増加中です。趣味を活かした開業を黒字経営に導くための成功するコツをまとめています。開業資金やランニングコスト、資格、賃貸契約の注意点も紹介していますので開業準備に役立ててください。
ワインショップを開業する人は、無類のワイン好きである場合がほとんどです。
釣り好きが高じて釣具店を開業する人がいるように、ワインへの情熱がワインショップ開業へのきっかけになります。
ワインショップを開業するにあたり、今まで温めてきた希望や想いと実際の経営バランスをとることが、成功の秘訣です。
計画通りに進めることも大切ですが、予算を大幅にオーバーしてしまう進め方は、返済のためにワインショップを営業することになりかねません。
ゆとりを持ってワインショップの経営を続けるために、一般的な開業資金の金額を紹介しますので、黒字経営をするために優先順位をつけて計画を立てましょう。
もくじ
1. ワインショップの開業資金
まずは開業するにあたり、資金が必要です。
開業資金や開業後の費用が十分でない場合には、銀行から借りる方法もありますが、行政の金融機関から融資を受けることもできます。
『新規開業資金制度』には事業計画や審査などもありますが、公庫の場合には、無担保でも保証人がないケースでも融資が受けられることもあります。
また、地方自治体も独自の支援制度を打ち出しているところもありますので、広く情報を収集して、無理のない形で開業資金を準備しましょう。
1-1. 初期費用と内訳
初期費用の中で大きな金額になるのが、家賃、保証金、リフォーム代です。
どんな物件を借りるのかによって費用は大きく異なりますが、リフォームが前提の場合には、初期費用は1,500~2,000万円くらいが目安です。
リフォーム代や設備費用を抑えるために、居抜き物件を借りる方法があります。
希望するワインショップに合う物件が見つかることもありますので、居抜きの物件チェックもしておきましょう。
居抜き物件の場合には、後から発生しかねない面倒事を避けるために、残っている備品や内装の所有者の確認は必須事項です。
店舗物件を借りる場合に、オーナーや管理会社により契約内容はさまざまです。
地域によっても礼金の有無などに違いがありますので、物件によって異なることを踏まえておきましょう。
今まで居住用の賃貸物件契約を経験している場合には、基本的な諸費用は共通していますので、目安が立てやすいかと思いますが、居住物件で敷金と呼ばれる保証金の額が店舗物件と大きく異なります。
戸建てでも、マンションでも住居として借りるときに、敷金を払うケースでは家賃の1~2カ月が相場です。
店舗物件の場合には保証金が2カ月のこともありますが、人気エリアでは家賃の6~20カ月分を支払うことも珍しくありません。
この額を契約時に支払いますので、保証金が何カ月必要になるのかは重要ポイントです。
初期費用には、保証金の他に仲介手数料、前家賃、保険料などが加わります。
1-2. ランニングコスト
ワインショップで販売するワインを仕入れるための購入費はもちろんですが、経営が軌道に乗るまでのランニングコストも開業準備金の中に入れて計画を立てましょう。
毎月の家賃に加えワインショップで従業員を雇う時には、人件費がかかります。
また光熱費や広告代、その他の雑費がワインショップの売上にかかわらず、発生します。
最低でも6カ月分のランニングコストを蓄えられる予算を目安にすると、開業後にゆとりが生まれます。
2. ワインショップに最適な物件の選び方
ワインショップを開店する物件を決めるときに、家賃と同様に重要視したいポイントは街のにぎわいです。
賃貸物件は毎月家賃が経費として発生しますので、物件の価格は最優先事項になるでしょう。
予算に見合った価格の物件を探すことも大切ですが、お店を軌道に乗せ収益を上げる視点での物件選びも重要です。
最適な物件を見つけるために、3つのポイントを紹介しますので役立ててください。
2-1. 3つのポイント
ワインショップの物件に必要なことに、おしゃれな雰囲気と清潔さが上げられます。
そして、もうひとつ重要なポイントは、にぎわいのある立地です。
・人通りと街のにぎわい
家賃と同じくらいか、もしかしたらそれ以上に重要な条件になるのが、通りのにぎわいです。
雰囲気がよくワインショップにぴったりな安い物件があったとしても、人通りがほとんどなくひっそりとした地域では、多くのお客さんは見込めないどころか、存在を知ってもらうまでに時間とコストがかかります。
ワイン工場のそばにワインショップを構えるのなら、街から離れている場所が良いでしょう。
街で暮らすワイン好きの人を対象にワインショップを始める場合には、多くの人が行き交う通りであることが開店後の経営状態に大きく影響します。
・理想のイメージに合っている物件
どんなビジネスを始めるときにも、イメージはとても大切です。
人の印象もほとんどが外見やその人が持っている雰囲気で決まってしまいますので、お店のイメージは大切にしましょう。
ある程度の外装や内装はリフォームで変えることはできますが、予算や大家さんとの関係で手を付けられない部分もあります。
ワインショップの場合にはおしゃれで洗練されていることは必然になりますので、他の店舗とは違う魅力を出すためには、独自の視点やイメージが求められます。
理想通りのワインショップを始められる物件なのか、きちんと検討しましょう。
・衛生面は満たされている?
清潔感もどの店舗にも欠かせない条件ですが、特に飲食関係の場合には、徹底したクリーンな環境が求められます。
お店の清潔感は、毎日の掃除が全てではありません。
どんなにきれいにしても、建物周りの環境や傷み具合によっては、清潔な環境づくりが難しいこともあります。
新しい物件である必要はありませんが、古くても手を加えることで清潔な印象を与える物件を見つけましょう。
2-2. 契約時の注意点
賃貸契約を交わすときに契約書に書かれている内容をきちんと把握している人は、残念ながら多くはありません。
居住用の賃貸契約とは違う注意点がありますので、わかりにくい時には質問をしたり行政書士にサポートをしたりしてもらいましょう。
契約書は『甲や乙』などの専門的な言葉が使われ、内容が難しいためになんとなく読み流してしまう人がほとんどです。
住まいにする物件であっても店舗として使用するための建物であっても、賃貸契約書に書かれていることが全てになりますので、きちんと目を通すことをおすすめします。
・住居用物件?店舗用物件?
基本的なことですが、店舗として使用できる物件であることをまず確認しましょう。
居住用としてしか使えない場合には、検討の余地はありません。
また、店舗物件の場合には、『定期契約書』と書かれていることがあります。
定期契約の場合には契約の延長ができないことがありますので、注意してください。
・リフォームは自由にできる?
物件によってはリフォーム会社が指定されていているために、希望するデザイナーや建築事務所に依頼できないことがあります。
また、大々的な工事を予定している場合には、隣接する店舗との関わりもでてきますので、リフォームは自由にできるのかどうか事前に確認しましょう。
・居住物件よりも早い解約通知
賃貸物件に住んでいる時には、引越しの申し出は1カ月前にするケースがほとんどですが、店舗用物件の場合には、それより以前に申し出をします。
解約通知は1カ月前と思い込みのんびりしてしまうと、契約内容と異なるために違約金などが発生することがあります。
店舗物件の場合には3~6カ月前に退去の申し出をするケースが多く、期間を過ぎた場合には、自動的に更新されてしまいますので気をつけましょう。
・退去時の条件も要チェック
ワインショップを始める夢を抱きながら物件探しをしますので、数年後にお店を移転したり閉店をしたりすることは考えにくいかと思いますが、契約を交わす以上退去時の条件もきちんと読み込んでおきましょう。
リフォームが自由にできるケースでも、退去時には内装を全て元に戻すことが条件になっていることがあります。
数年後に後悔することのないように、契約書にしっかり目を通しておきましょう。
3. ワインショップのような在庫ビジネスで黒字経営するコツ
特に在庫ビジネスに関しては、利益を大きく左右するデータ管理が重要です。
貴重なデータとなる日々の記録をきちんとつけておくことで、理想的な在庫管理が可能になり、経営を軌道に乗せます。
また、ワインショップを開業したいと思っている人のほとんどの方が、ワイン好きであり、さまざまな銘柄のワインに精通しています。
すると自然に好きなワインや貴重なワインをまとめて購入してしまう傾向になり、一般受けするワインが少ないことから、在庫の山を抱えてしまいます。
お客さまのニーズを重要視しながら、ワイン選びをすることを念頭に入れると在庫管理のできる黒字経営の道が開けていきます。
人気の高いワインを仕入れ、売り方や見せ方、どんなお店が喜ばれるかなどの『商売としての基本』を工夫しながらワインショップ経営を成功させましょう。
4. ワインショップの開業に成功した事例
比較的競争が激しいと言われるワインショップ業界ですが、ワインを好む人が増加傾向にあり、ワインショップ数は微量ですが増えています。
おすすめのワインショップや口コミなどを見かけますが、公になっている成功事例や詳しい実体験などが少ないのが現状です。
ワインの売上は4年連続で増量し、ワインは日本人にとってブームではなく、すでに定着したお酒です。
それでも世界一ワインの消費量が多いバチカン市国の年間約42Lと比較をすると、日本人の平均消費量は3Lありません。
文化の違いやワインを飲みだしてからの年数が浅いために、世界と比較をすると少ない数字ですが、違う見方をするとまだまだ伸びしろがあると言えます。
5. ワインショップの開業に必要な資格・免許
ワインショップの経営には、『一般酒類小売業免許』が必要です。
この免許があればワインだけではなく酒類全般を店舗で販売できますが、店舗での販売に限りますので通信販売には適応されません。
店舗で実際にワインを手に取ったり、スタッフから専門知識を聞いたりして、ワインを購入する人も大勢いますが、すでにお気に入りのワインがある場合には、通信販売でワイン注文する人も一定数います。
さまざまなニーズに応えるために、輸入ワインを通信で販売できる『通信販売酒類小売業免許』を取得しておきましょう。
国産ワインの通信販売も可能ですが、少量生産をしている造醸所のワインのみ取扱が可能です。
通信販売酒類小売業免許取得の代行を請け負っている企業もありますが、時間に余裕のある場合には、自分で手続を進めることができます。
管轄の税務署で申し込みをすると審査が受けられ、取得時に免許税が約3万円かかります。
必要書類や提出用紙がたくさんありますので、税務署職員に教えてもらいながら進めていきましょう。
地域によっては6カ月以上かかることもありますので、早めに相談を開始しましょう。
一般酒類小売業免許の場合には申請後から2カ月かかると言われていますが、通信販売酒類小売業免許取得と同様に個人で進める場合には、余裕を持って取り掛かりましょう。
6. まとめ
誰もが自分の好きなことや得意なことを仕事にできたら、とても素敵なことでしょう。
ワイン好きの人にとっては、ワインショップを開業して多くの人に喜んでもらえることが理想の仕事です。
需要が伸びてきているワインの販売においても、他の仕事同様に開店前の徹底したリサーチと開店後のデータ管理が重要です。
偏った情報だけではなく、多くの人に愛されるワインショップにするための情報収集が鍵になります。
日本国内を見ると東京都がワインの消費量が多く、年間消費量が約10Lになり、その後に山梨県、長野県、京都府と続きます。
消費量が多いところはワインショップの数も比例して多くなる傾向にあるので、ライバル店舗が存在しますが、切磋琢磨しながらワイン業界を活性化する道もあります。
ワイン業界全体の盛り上がりが、個人経営のワインショップが成功するためにも大切な要素と言えるのではないでしょうか。