海外では日本ブームが起きており、アジアはもちろん欧米やヨーロッパからも多くの旅行客が訪れています。しかし、日本は物価が高いと感じられることが多く、宿泊費を可能な限り抑えたいと考える旅行客が増えています。そんな中で、ペンションを経営して成功するにはどうすればいいのか、開業資金と合わせて解説します。
自分好みの雰囲気をだし、少数のお客様をおもてなしできるペンション経営をしたいと多くの人が考えています。では、開業するためにはどれくらいの資金が必要で、黒字経営を目指すにはどのようなポイントがあるのでしょうか?
これからペンションを経営したいと考えている人に向けて、開業前~開業後の経営のコツを解説していきます。
もくじ
1. ペンションの開業資金
ペンションを始める為に必要な開業資金は規模や土地にもよりますが、8,000万円~1億円を開業資金として集めておくと安心できます。
一般的なペンションのサイズである10室で定員が20名~25名ほどの場合は8,500万円ほどでしょう。まずは初期費用とその内訳から見ていきましょう。
1-2. 初期費用と内訳
10室で定員が20名~25名のペンション、土地は自己保有のものを使うと想定します。土地を借りる場合は以下の内容に加えて契約時に物件取得費がかかります。
また、残置物がある場合はその撤去や解体費用がかかることになります。
工事・設備費
外装工事費:3,000万円
改修修繕費:2,000万円
内装工事費:2,000万円
空調工事費:800万円
その他開業費
宣伝広告費:200万円
通信費 :100万円
その他雑費:150万円
合 計:8,250万円
合計で8,250万円というシミュレーションが出来ました。
内装・外装へのこだわりや設備の充実さで金額は大きく変わりますが、平均的なペンションの初期費用として参考にしてみてください。
1-3. ランニングコスト
無事に開業してからがペンション経営の本番です。成功させるには収支を把握することが非常に重要ですので、まずはランニングコストとしてどのような費用がかかるのかを知っておきましょう。
最低でも以下の項目の出費が毎月あります。
・人件費
・水道光熱費
・通信費
・消耗品費
・保守修繕費
・販売促進費
・雑費
水道光熱費はペンションを始める土地によって大きく異なってきます。寒い地域であれば冬場になるとエアコンや床暖房を使うことで夏場の何倍にもなることがあります。
また、食事を提供する場合はその分の費用、温泉やプールなどの施設が付いている場合はその維持費も上乗せされます。
2. ペンションに必要な開業資金の調達方法
最低でも8,000万円がかかるペンションの開業資金の一部は、何らかの方法で調達する必要が出てきます。スポンサーがついていたり、身内に融資を受けられれば良いのですが、それが叶うのはごく一部です。
資金調達の主な方法は金融機関や開業をサポートする制度を利用した融資になります。
・日本政策金融公庫
融資可能額:100万円~3,000万円
振込にかかる期間:1ヶ月~2ヶ月
・銀行や信用金庫
融資可能額:50万円~5,000万円以上
振込にかかる期間:1ヶ月ほど
代表的なのはこちらですが、ほかにもベンチャーキャピタルやクラウドファンディングという方法もあります。経営に不慣れな場合は、まずは日本政策金融公庫に相談するのがいいでしょう。民間の金融機関よりも開業・創業時の融資の審査が緩く、営利目的の団体ではないので融資を受けやすいです。
土地などの担保がある場合は銀行や信用機関を利用すると、経営のアドバイスも受けられます。
3. ペンションに最適な物件の選び方
ペンションの経営において最も重要なのは「選んでもらう」ということです。ペンションや民宿は数が非常に多いので、その中から選んでもらうには物件選びの時点から差別化を狙いましょう。
3-1. 3つのポイント
個性があって選びたくなるペンションにはどんな物件がいいのでしょうか?3つのポイントに絞って解説していきます。
・豊かな自然がある立地
一番重要なのは普段の生活では見られない景色やできないレジャーがあるなど、ペンションに来る理由になる立地です。スキー場が近くにある、高原や海の景色を見られる、ハイキングや釣りを楽しめるといった、土地ならではの楽しみが出来る立地の物件がベストです。
しかし、こうした人気の自然環境がある地域はほかのペンションや民宿が多く、競争が激化しています。それを考慮し、あなたのペンションに来たくなるような魅力を出せる物件を選ぶようにしてください。
広いウッドデッキから雄大な自然を見ることができたり、すでにバリアフリーになっているなど、差別化を図れる物件がオススメです。
・建物がある場合はそれを生かせるか
過去にペンションを経営していたり、住居だった物件を借りてペンションにする場合は、理想とするペンションにその物件が合致するかが重要です。
カントリー風のほっとできるペンションを経営したいのに、和風であったりモダンな雰囲気の建物では理想から離れすぎていて、無理に契約してもなかなか良いペンションを作ることが出来ません。
・交通のアクセスが悪すぎない
ペンションの利用は外国からの旅行客も見込みたいので、交通アクセスが悪くない場所が良いです。車でしか来られない場所だとお客さんが偏ってしまうので、出来るだけ公共交通機関を利用しても来られる立地の物件にしましょう。
どうしても交通アクセスが悪い場合は送迎を考えられるか、便の悪さを考慮してでも来たくなるペンションにする自信があるかを検討してみてください。
3-2. 契約時の注意点
土地や物件を借りてペンション経営をするためには必ず契約を行います。その際に特に注意しておきたいのは以下の点です。
・建物がある場合はその取扱いについて
・ライフラインの状態
・解約や更新時の条件
ペンションや民家だった建物を借りてペンション経営を始める場合は、どこまで内装・外装に手を加えても良いのか確認しましょう。
また、状態を確認してどれくらいの修繕・改修が必要で、費用の負担はどこまでが借主になるのかなども確かめておかないと思わぬ出費が出てしまうことがあります。
立地が山の中や近くに民家がない場所の場合は、ガスや水道が来ていないことがあります。そうなると別途工事が必要になり、この場合も自己負担になることがあるので、土地のみを借りる場合は特に確認してください。
4. ペンションで黒字経営するコツ
ペンションを無事に開業出来ても、黒字経営を目指さないと数年で経営困難になってしまいます。せっかく夢を叶えたのですから安定した経営を続けていきたいですよね。
その為には以下のポイントをまずは押さえて、土地に合った経営を続けていくことが重要です。
・オープン直後は集客に力を入れる
・ネットを活用して幅広く広告宣伝する
・ほかのペンションとの差別化を図る
・シーズンによって宿泊価格を変える
・料理やサービスで満足度を高める
・リピーターを増やす
特にペンションはオープン直後は知名度が低いので、一組も宿泊客が来ない日も目立つと思います。稼働率を高めるためには、ペンション団体に加盟して旅行会社から送客してもらったり、雑誌やガイドブックへの掲載も少しコストを多めにかけてでも行ってみましょう。
5. ペンションの開業に成功した事例と年収
ペンションを開業して成功した事例をご紹介します。必ずしもこの通りになるわけではありませんが、成功に繋げるための参考にしてみてください。
ペンションの規模は前述した定員25名までの一般的なもの、高原が近く夏場に人気の立地です。
初年度売上高:670万円
営業利益 :-150万円
2年度売上高:710万円
営業利益 :-60万円
3年度売上高:950万円
営業利益 :120万円
3年度目までは集客が悪く、人件費もかなりかかっていたため赤字経営でした。2年度後半に戦略を変え、美味しい料理とペットと泊まれるペンションにしたことで大幅に客数が増えました。
また、人件費もオーナー夫婦のみを基本とし、繁忙期のみアルバイトを雇うことで削減することに成功しています。
6. ペンションの開業に必要な資格・許可
ペンションは宿泊施設であるため「旅館業法」に則り手続きを行う必要があります。都道府県知事の許可が必要となり、施設の構造と設備の基準は「旅館業法」で定められているので、建築の際には注意が必要です。
加えて開業する都道府県の条例に従って建築基準法・消防法・風俗営業法の適正化も必要です。温泉があったりペットを預かる可能性があるなど、通常のペンションにプラスアルファの価値を付ける場合はそれ毎に許可が必要になります。
7. まとめ
ペンションをはじめとした宿泊施設の経営は集客が非常に重要になり、競争率も高いことから決して容易な業種ではありません。しかし、小さめのペンションであれば夫婦や家族で経営を行って人件費を減らしたり、宿泊客とのコミュニケーションを取ってリピーターを確保するなど、小規模の宿泊施設ならではの利点もあります。
その土地の魅力を生かし、初めて来た人もほっとできるようなペンションづくりを目指してみてください。最初の数年は苦しいかもしれませんが、集客につながる活動をこまめに行い、来てくれたお客さんに丁寧な対応をしていくことで、口コミで評判が広まって客数は確実に増えていくはずです。